特別受益と遺留分の関係
※2023年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは前回に引き続き
贈与を取り上げます。
内容は
「特別受益と遺留分の関係」です。
以下の例を考えてみましょう。
■家族構成
父(85歳。自宅売却後、老人ホーム居住)
母(既に他界)
長男(60歳。借家住まい)
次男(58歳。持ち家あり)
今この瞬間は令和元年5月だとします。
■生前贈与の実行
令和元年9月、父から長男へ
2,000万円の生前贈与の実行。
贈与契約を振込日に締結。
■贈与税の検証
当時、最大3,000万円までの
非課税枠があったため、その他の
要件を全て満たすとする。
そのため、贈与税申告すれば
贈与に関する課税関係は終了。
■相続発生(税務の検証)
令和4年8月、相続発生。遺言なし。
相続財産は8,000万円(預金のみ)。
3年内贈与加算の対象外
(措法70の2➂)。
相続税総額は470万円。
■相続発生(各々の主張)
長男の主張:
税理士に確認したところ
生前贈与分は加算されないと
回答をもらっている。
そのため・・・
相続財産は8,000万円となり
遺言はないため、4,000万円ずつ
わけるのが妥当だ。
次男の主張:
生前贈与は相続財産の前渡しだから
その分、自分は2,000万円分を
余分にもらわないと気が済まない。
だから・・・
自分の取り分は5,000万円で
兄の取り分は3,000万円だ。
■相続発生(法務の検証)
正しいのは・・・次男!
特別受益の持ち戻し(民法903)により
生前贈与が持ち戻しされます。
相続財産8,000万円
+特別受益2,000万円
=1億円
1億円÷2=5,000万円
長男:
5,000万円-2,000万円=3,000万円
次男:
5,000万円
■生前取りうる打開策
生前贈与時に
特受受益の持ち戻し免除
(民法903➂)をすべきでした。
仮に、生前贈与の全てにつき
持ち戻し免除をした場合、
取り分計算は以下のとおりです。
相続財産8,000万円
+特別受益 0
=8,000万円
8,000万円÷2=4,000万円
長男:
4,000万円-0=4,000万円
次男:
4,000万円
■注意すべき事項(遺留分)
特別受益の持ち戻しを免除した
場合であっても、次男の遺留分を
侵害することはできません。
遺留分算定基礎財産の計算における
相続人に対する生前贈与は
過去10年間持ち戻しされます
(民法1043➀➂)。
そのため、次男の遺留分計算は
以下のとおりとなります。
相続財産8,000万円
+生前贈与2,000万円
=1億円
次男の遺留分:
1億円×1/4=2,500万円
そうすると・・・
特別受益の持ち戻しを免除した場合
における次男の取り分4,000万円は
次男の遺留分2,500万円を
害していないことになります。
そのため・・・
今回の持ち戻し免除は有効に
機能したといえます。
持ち戻し免除をする場合には
遺留分への配慮を失念しないように
することが必須です。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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