生命保険金の受取人は誰にすべきか?(その3)
※2017年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「生命保険金の受取人は誰にすべきか?(その3)」ですが、
名古屋高裁(平成18年3月27日判決)を取り上げます。
この裁判は岐阜家庭裁判所が第一審であり(平成17年4月7日)、
これが名古屋高裁で判断されたものとなります。
前々回のブログで最高裁(平成16年10月29日)を取り上げ、
生命保険金は原測として受取人固有の財産ですが、「特段の事情が
存する場合には〜当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて
持戻しの対象となると解するのが相当である」という内容を解説しました。
この「特段の事情」が認められたのが、
前回のブログでご紹介した東京高裁判決、今回の名古屋高裁判決です。
まず、遺産額の概要です。
〇相続開始時の価額
・ 不動産:8,328万5,000円
・ 預貯金:312万4,190円
・ 保険解約返戻金:80万4,693円
・ 合計:8,721万3,883円
〇遺産分割時の価額
・不動産:6,640万円、
・保険解約返戻金:18万3257円
・合計:6,658万3,257円
では、特別受益についてです。
〇 申立人の特別受益
死亡保険金等の合計は5154万0846円。
・死亡保険金等の合計額はかなり高額であること
・この額は本件遺産の相続開始時の価額の約61パーセント
・遺産分割時の価額の約77パーセントを占めること
・被相続人と申立人との婚姻期間は3年5か月程度であること
などを総合的に考慮すると上記の「特段の事情」が存するものと
いうべき。
・申立人の特別受益の額は5,154万0,846円となる。
前回に解説した通り、明確な数値基準がある訳ではなく、
あくまでも総合勘案の世界ではあります。
ただし、前回の事例同様、
「遺産の相続開始時の価額の約61パーセント」が1つの根拠であり、
「特段の事情」が認められた事例としては、1つの数値基準「的」なもの
が示された事例ではあります。
3回に渡って、生命保険金の受取人について解説してきましたが、
死亡保険金が受取人固有の財産とは絶対的に言えない訳です。
この点は十分に考慮した上で、
皆さんがお客様から相談を受けた場合には、
提案をしていくことが大切なのです。
あくまでも総合勘案の世界ではありますが・・・。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。