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2018.03.29

生命保険金の受取人は誰にすべきか?(その1)

※2017年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「生命保険金の受取人は誰にすべきか?」ですが、

平成16年10月29日の最高裁判決を取り上げます。

先日、ある媒体に税理士が下記旨の記事を書いていました。

〇 相続人は子供2人(長男、次男)で争う可能性がある

〇 生命保険金は次男を受取人として、争続になるのを回避する

私はこの記事を読んだとき、唖然としました・・・。

ご存知の通り、生命保険金は基本的には受取人固有の財産であり、

遺産ではないことから、遺留分減殺請求の対象になるのは

被相続人の遺した「遺産」です。

仮に、被相続人の遺志が「唯一の財産である自宅の不動産は長男に」と

考えていた場合、遺留分の対象になるのはこの不動産になるので、

生命保険金を次男がもらったとしても、この不動産を対象にして、

遺留分の減殺請求はできてしまうのです。

次男はもらい得ということです。

おそらく、この税理士はこのことを知らずに書いているのでしょうが、

もし、この記事を読んだ方が信じてしまうといけないので、

今回のメルマガでお知らせします。

「基本的には」生命保険金は受取人固有の財産なので、

遺留分の対象になりません。

だから、上記事例を前提にすれば、長男が保険金受取人になっていれば、

次男から遺留分の減殺請求がされたとしても、これで支払えばいいのです。

ただし、1点だけ注意点があります。

それは生命保険金は常に受取人固有の財産ではない、ということです。

この参考となるのが、上記の最高裁判決です。

〇被相続人が自己を保険契約者及び被保険者とし、

共同相続人の1人又は一部の者を保険金受取人と指定して

締結した養老保険契約に基づく死亡保険金請求権は、

その保険金受取人が自らの固有の権利として取得するのであって、

保険契約者又は被保険者から承継取得するものではなく、

これらの者の相続財産に属するものではないというべきである。

〇また、死亡保険金請求権は、被保険者が死亡した時に初めて発生す

るものであり、保険契約者の払い込んだ保険料と等価関係に

立つものではなく、被保険者の稼働能力に代わる給付でもない

のであるから、実質的に保険契約者又は被保険者の財産に

属していたものとみることはできない。

〇したがって、上記の養老保険契約に基づき保険金受取人とされた相続人が

取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、

民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと

解するのが相当である。

〇もっとも、上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は、

被相続人が生前保険者に支払ったものであり、保険契約者である

被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が

発生することなどにかんがみると、保険金受取人である相続人と

その他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし

到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき

特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、

当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると

解するのが相当である。

〇上記特段の事情の有無については、保険金の額、

この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、

被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの

保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、

各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。

結果として、生命保険金も「遺産」に含まれることがある訳ですが、

そこは金額、状況の総合勘案で考える、ということです。

いかがでしょうか?

税理士は生命保険にも相続にも関わることが多い訳ですから、

最低限、この知識はもっておく必要があります。

もちろん、数値的な基準が言えない部分が心苦しい訳ですが、

それは総合勘案である以上、仕方のないことです。

ただし、そうなる可能性があることだけは明確に伝えておきましょう。

それがお客様に対する説明責任というものですから。

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