申告内容に疑義があるから税理士が署名しないはアリか?
※2019年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
私は仕事柄、税務関連についてかなりマニアックな
検索をするなど調べ物をするのですが、税理士が書いている
コラムなど、疑義を感じる内容を見かけることがあります。
その中の1つに、「顧問先の申告内容を信用できない場合、
税理士として申告書に署名をしない」、もしくは
「税務代理権限証書を提出しない」が挙げられます。
さて、今回と来週水曜のメルマガの2回にわたって、
上記の行為に関する適否を解説するとともに、
税理士としての申告書署名義務や、
税務代理権限証書の意義について解説します。
税理士の業務を現実的に考えると、顧問先の
会計処理内容およびそれにともなう申告内容について
信用できないという場面はあるかと思います。
これは、顧問先が自計化している場合であっても、
税理士が記帳代行をやっていても同じで、
処理内容を問い合わせても明確な回答がないなど、
疑わざるを得ないようなケースです。
一方で、いかに申告内容に疑義があったとしても、
税理士が申告書の作成をした場合、
その申告書には署名押印の【義務】があります。
税理士法第33条第1項(署名押印の義務)
税理士又は税理士法人が税務代理をする場合において、
租税に関する申告書等を作成して税務官公署に提出する
ときは、当該税務代理に係る税理士は、当該申告書等に
署名押印しなければならない。(以下、略)
ですから、申告内容に疑義があり、顧問先との
信用・信頼関係が築けない場合において、
契約を解除するならまだしも、それでも
申告書を作成したのであれば、署名押印の義務があり、
署名押印しない場合は税理士法違反になります。
また、税理士が署名押印しない場合であっても、
申告書の効力は何ら変わりません。
税理士法第33条第4項
第一項又は第二項の規定による署名押印の有無は、
当該書類の効力に影響を及ぼすものと解してはならない。
近畿税理士会の税理士法解説(該当部分)
http://www.kinzei.or.jp/search/regulation/chapter_4_4.html
ここからわかることは、税理士が署名押印しないでも
その税理士に責任が及ばないわけではなく、
責任は何ら変わらず追及されることになります。
申告書に税理士の署名押印がない場合(この場合、
税務代理権限証書も添付されていないはずです)、
税務調査などで税務署が連絡するのは顧問先
になるわけですが、そこで実は、申告書の作成を
税理士がしていることが判明すれば
税理士が税理士法に抵触していることがわかります。
税務調査であれば、支払報酬を見れば明白です。
ですから、顧問先の申告内容に疑義を感じても、
税理士として署名押印しないという行為は、
責任回避どころか、むしろ明確な税理士法違反として
追及される材料を新たに作ってしまっているのです。
来週水曜の本メルマガでは、同じようなケースで、
「税務代理権限証書を提出しない」場合は
どう考えるのかについて解説します。
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