• HOME
  •  › ブログ
  •  › 相続時の金庫株特例の留意点
2023.06.23

相続時の金庫株特例の留意点

※2022年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは、
「相続時の金庫株特例の留意点」です。

以前のメルマガで
「自己株式の取得に関する税務・法務上の留意点」
をお届けしたことがあります。

その際にも軽く触れましたが、
相続時の金庫株特例(措法9の7)につき
今回は詳細に検討します。

相続税の納税資金確保を目的に実行されることが多い特例ですが、
相続時の金庫株実行時におけるその他の論点整理をします。

1.財源確保
先代相続の際に法人に買取資金が無ければ
金庫株実行ができません。
法人における生命保険などを活用し
十分な財源を確保することが先決です。

また、金庫株実行、つまり、自己株式の取得は
分配可能額の規制を受けます(会461)。
仮に違反すると取締役は会社へ財源を
補填する責任を負います(会462(1))。

2.株価計算
税理士としては、金庫株実行日を基準日とした
株価計算をする必要があります。
この場合の税務上の適正株価は
所基通59-6(小会社方式)による必要があります。
評価会社が大会社に該当し相続時は
類似業種比準株価100%使用できた場合でも
金庫株実行時は割高な株価を採用する必要があります。
特に、所基通59-6は
令和2年8月28日付課資4-2ほか1課共同
「『所得税基本通達の制定について』の
一部改正(法令解釈通達)」により
改正が行われていますので注意が必要です。
同改正の趣旨説明は以下のとおりです。
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/joto-sanrin/200930/200930.pdf

3.その他留意点(1)
事業承継税制(特例版)を相続税で適用した際、
他の親族(弟など)から遺留分請求され、
対応資金を確保するために金庫株を実行すると
期限確定事由に該当してしまいます。
もし、事前に一部金庫株実行をする場合には
一部の株式に事業承継税制を適用しないことも一考です。

4.その他留意点(2)
相続時の金庫株特例(措法9の7)は
相続又は遺贈により株式を取得することを要件にしていますが
相続時精算課税制度を用いて生前贈与で取得した場合でも
特定贈与者から相続等により取得したものとして
同特例の適用があります(相法21の16(1))。

5.その他留意点(3)
相続時の金庫株実行時における譲渡税計算の際
相続税の取得費加算の適用を失念しないよう
留意してください(措法39)。
相続税の取得費加算の特例が併存適用できないのは
相続空き家特例(措法35(3)(4))となります。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

毎週水曜日に配信する『税務調査対策のメールマガジン』では、最新の税務調査事情はもちろんのこと、調査官の心理、税務署のウラ側など元国税調査官だからこそ語れるマニアックなテーマまでをお届けします。
「こんなことまで話して本当に大丈夫ですか?」 と多くの反響を頂く税理士業界では話題のメルマガです。
お名前とメールアドレスを登録するだけで 毎週【 無料 】でメルマガを配信いたします。