社内飲み会を交際費として指摘された場合の反論ポイント
※2017年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
会計事務所がよく迷う判断として「顧問先が社内で開催した
飲み会の会社負担分は福利厚生費になるのか?
もしくは交際費になるのか??」というものがあります。
税務調査においても、よく論点になるポイントで、
普段から処理に気を付けていても、
指摘されることが多い事項に挙げられます。
今回のメルマガでは、福利厚生費と交際費の
詳細な「法的な解釈による違い」はあえて省略し、
税務調査で反論のポイントになる事項に絞って解説します。
まず、福利厚生費と主張するためには、
該当する社内飲み会に「水平的公平性」が
担保されていることが必要となります。
※「水平的公平性」については、昨年「日当」と
「人間ドック」についてメルマガを配信していますので
復習される方はそちらも合わせてお読みください
簡単にいえば、「対象となる従業員全員が参加できる
状況であること」が前提であって、特定の従業員や
役職者だけが参加できる状況であれば、それは
福利厚生費ではなく交際費になる、という考え方です。
ここでいくつか問題になりやすい点があります。
忘年会などの全従業員対象の飲み会ではなくても、
例えば、部署単位や、工場・支店単位での開催も、
【対象となる】従業員が参加できるのであれば、
福利厚生費と認められることになります。
トヨタなど超大企業で考えると、非常に
当たり前のことだと理解できるはずです。
飲み会とは別になりますが、社内旅行も
「工場や支店ごとに行う旅行」が認められています。
「No.2603 従業員レクリエーション旅行や研修旅行」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/gensen/2603.htm
従業員全員が対象ではなくても、福利厚生費になる
ということは、まず抑えておくべきでしょう。
また、実際の参加者が対象者全員である必要はなく、
飲み会の開催要件として、対象者に周知されていれば
公平性が保たれていると考えれば大丈夫でしょう。
問題なのは、実際の飲み会出席者ではなく、
誰に周知・声掛けされたのか、になります。
税務調査ではここが重要な証拠となりますので、
できる限り周知内容・対象範囲を抑えておくべきです。
また、通達に「運動会、演芸会、旅行など」と
されていることから、忘年会・新年会などの
全社イベントを除く各社内飲み会の費用を、
すべて福利厚生費ではなく、交際費と
指摘する調査官もいるようです。
「No.5261 交際費等と福利厚生費との区分」
https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5261.htm
しかし、上記文言の頭には「専ら従業員の慰安のために
行われる」とある通り、あくまでも目的が
従業員の慰安としているのであれば、
なにも社内飲み会が否定されるものではありません。
平成28年版「会社税務事例」649−2にも、
福利厚生費の定義として下記が載っています。
「福利厚生費というのは、広く従業員の生産意欲を
向上せしめるための潤滑油といってよいであろう。
そして、本来の交際費等の課税は、一般にいうところの
福利厚生費に対してまで課税する趣旨ではない。」
として、「専ら」の意味を広く解釈しています。
最後になりますが、社内飲み会の費用が
福利厚生費(会議費)ではなく交際費とされた事例を
取り扱った過去のメルマガも載せておきます。
800万円の交際費枠に余裕がある法人であれば
調査の論点にならない可能性もありますが、
損金枠を超えている法人は特に、福利厚生費や会議費を
交際費と指摘される可能性が高いので注意してください。
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