税務調査が任意なら断れないのですか?
※2021年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回は「任意調査」です。
税務調査は一般的に「任意調査」と呼ばれています。
このことから、顧問先に
「税務調査が任意なら断れないのですか?」
と質問されればどのように回答するでしょうか。
この質問に対して正確に回答できる
税理士・会計事務所は意外に少ないと思います。
まず整理しておくべきは、
税務調査:国税通則法に定める質問検査権に基づく行為
強制調査:国税通則法(旧国税犯則取締法)に基づく行為
という、決定的な違いです。
簡単にいえば、裁判所の令状があれば「強制調査」であり、
それ以外は「税務調査」(任意調査)になります。
これは、調査に来た国税職員の在籍部署等に関係ありません。
例えば、国税査察官が来たとしても裁判所の令状がない限りは、
あくまでも税務調査(任意調査)に分類されます。
実際にあるのが、顧問先に強制調査が入ったとして、
事情聴取のために顧問税理士のところに来る行為は、
国税査察官が来たとしても、税務調査に分類されます。
一般的に税務調査を「任意調査」と呼びますが、
これは税務調査を受けても受けなくてもいい、
という意味の「任意」ではないことに注意が必要です。
令状がある「強制調査」と明確に区分するために、
一般的に「任意調査」と呼んでいるにすぎません。
そして、税務調査(任意調査)は断ることができません。
なぜなら、質問検査権には【受忍義務】があるからです。
国税通則法第128条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役
又は五十万円以下の罰金に処する。
二 第七十四条の二、第七十四条の三(第二項を除く。)
若しくは第七十四条の四から第七十四条の六まで
(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に
対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの
規定による検査、採取、移動の禁止若しくは封かんの
実施を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
この罰則規定は、税務署職員に質問検査権という権限を
与える一方で、納税者がする、質問検査権をないがしろにする
行為に対して「罰則」を与えるものです。
調査を拒否したり、調査官が質問したことに対して
何も答えなかったり、嘘を答えたような場合は
「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という
罰則が定められているのです。
この規定を「受忍義務」と呼び、納税者は
税務調査が実質的に断れないことになっているのです。
このことから、税務調査を「間接強制調査」と
呼ぶこともあります。
税務調査では調査官には質問検査権がある一方で、
納税者には受忍義務(罰則規定)があるという
関連性で理解してください。
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