税務調査での「指導に留める」は次の調査に影響するか?
※2022年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
年内の税務調査も終盤を迎えつつありますので、
今回のメルマガでは税理士・会計事務所が気になる、
調査では「指導に留まり」否認にはならなかった事項が
次の調査でどこまで影響するのかを取り上げます。
まず、税務調査が結了した際の、税務署内での
処理について解説します。
税務調査が結了した際には、是認・否認にかかわらず、
調査官は統括官(以上)に対して決議をあげます。
いわば「この内容で調査が終わりました」に対する、
税務署内での決裁・承認の手続きです。
法人課税部門であれば、決議に必要な書類等は
下記と定められています(個別通達:
「調査手続等に関する当面の事務実施要領について
(法人課税事務関係)(指示)平成24年9月20日
課法4-51ほか3課共同 を参照)
●決議書
●当初申告書(無申告法人の場合は除く。)
●調査手続チェックシート(本表・事前通知用)
●調査経過記録書および証拠書類
●争点整理表(作成した場合に限る。)
なお、上記「調査手続チェックシート」は
下記URLを見ていただければ詳細を把握できます
(下記は調査手続きが法改正された平成24年当時の
フォーマットなので若干は改変している可能性あり)。
ここで本題なのですが、否認項目については
修正申告が決議書に載るわけですが、一方で
否認にはならなかったが「指導に留める」と
された項目・内容が「調査経過記録書」に
記録されるかどうかが1つの分岐点となります。
調査経過記録書の作成基準は下記とされています。
「争点整理表・調査経過記録書の作成に当たっての
留意点について(情報)」(平成25年5月7日
国税庁 課税総括課 第2号)
問5 調査経過記録書は、調査時における
納税義務者等との応接状況等を記載することと
されていますが、具体的にどのような内容を
どの程度記載すればよいのでしょうか。
(答)
調査経過記録書は、調査において検討、確認した事項や
復命に際して統括官等から指示を受けた事項を記載し、
調査事案の管理や調査の内容を記録として残しておく
ことを目的として作成するものです。このため、
事前通知時からの納税義務者等との応接状況などの
論査経過や検討、確認した内容、相手方の主張、
調査により把握した問題点等について、時系列に
記載することとしていますが、納税者とのやり取りを
逐一記載するといった必要以上の記載は不要ですので、
メリハリのある記載に心掛けてください。具体的には、
例えば、納税義務者等との応接においてじ後の争点
となると思料される内容(非違事項の内容など)
については、確認した内容(調査箇所、調査した書類、
調査先の担当者名)や相手方の主張のほか、調査により
把握した問題点を簡潔に記載することとします。
ここでは、「じ後の争点となると思料される内容」
が記載されることになっていますが、実際に
税務調査で「指導に留める」とした内容を
調査官が【申送り】として記載するかどうかは、
調査官の裁量に任されている部分が大きいです。
例えば、明らかな否認事項にもかかわらず、
調査現場ではバーターで否認指摘を取り下げた事項を
「指導に留めた」などとは記載しないでしょう。
そのような記載は、決議が通るか通らないか以上に、
会計検査院に引っかかるリスクも考慮されます。
指導となった内容・詳細を、以後の調査担当者が
把握している可能性は100%ではないのです
(内容によって記載されるかは相当相違します)。
なお、過去の調査事績が詳細に記載されている
決議書(一式)は、税務署内での保管期間が
最低7年(繰越欠損金などの影響で最大10年)
とされています。
次の担当調査官が過去の調査内容をどこまで
見るのかは担当者によってバラバラですが、
少なくとも「指導に留める」とされた事項が、
すべて申送り事項となっているかは怪しいです。
調査結了の際に、「指導に留めるが申送りします」
と明言する調査官もいるようですが、実際に
書類に記載されるかどうかもわかりませんし、
「書かないでください」とコントロールできる
わけでもないでしょうから、次の調査に影響するか
どうかはあまり心配しない方がいいでしょう。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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