税務調査で従業員不正が発覚した場合の対応:第2回
※2024年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガから引続き、税務調査で
従業員不正が発覚したケースを解説していきますが、
今回は普段の税務処理に出てこないからこそ
理解・納得されにくい「損害賠償請求権」です。
従業員が不正・横領している事実が発覚した場合、
法人は損害を被っている立場になるわけですが、
一方で、法人は不法行為者である従業員に対して
民法上の損害賠償請求権が発生することになります。
民法709条(不法行為による損害賠償)
故意又は過失によって他人の権利又は法律上
保護される利益を侵害した者は、これによって
生じた損害を賠償する責任を負う。
また、従業員の不正・横領の時期および金額等が
不明という特殊な場合を除き、税務調査であれば
不正時期・金額は確定するのでしょうから、
損失と損害賠償請求権は不正が行われた時期(過去)に
同時計上されることが原則となります(同時両建説)。
わかりにくいので、令和6年の税務調査において、
令和4年に従業員が架空外注費で不正を行っていた
ケースで具体的な処理を例示します(従業員の親族を
代表とする法人に架空外注費を支払っていた場合)。
【令和4年分の当初申告】
外注費 100 / 現預金 110
仮払消費税 10
【令和4年分の修正申告】
雑損失 110 / 外注費 100
仮払消費税 10
損害賠償請求権 110 / 雑益 110
このように不正=損失が発覚した進行期(令和6年)に
損失が計上されるわけではなく、
不正があった期に損失が計上される
(上記例の場合は経費が否認され損失が増えるので0)
同時に従業員に対する損害賠償請求権が計上され、
益金(雑益)が発生する(法人税の増差所得)
否認となった経費該当分の消費税が発生する
となり、不正(損失)が発覚したにもかかわらず、
修正申告(増差が発生)する結果となります。
なお、この損害賠償請求権については
不法行為者である従業員から金銭の支払いを
受けた時点で消えるわけですが、現実的には
従業員が一部しか支払いができない、もしくは
無資力で実質的に返済不能という状況である
ことがほとんどかと思います。
このようなケースでは、その従業員と
清算条項を入れる示談書などを締結し、
不正・横領額のうち求償しない(できない)額を
確定させてはじめて債務免除となりますので、
この時点で法人税基本通達9-6-1(4)を根拠に
貸倒損失 / 損害賠償請求権
となるのであって、進行期以降の処理となり、
税務調査の対象期間内では損金処理できません
(一般的には、従業員に自宅など財産の処分などを
求めることが多いのですぐに貸倒損失にはできない)。
また、上記はあくまでも従業員(社内)による
不正ですが、取引先など外部の者による
不正の場合については下記を参照してください。
「不正・横領の税務/第2回:
益金の計上時期がズレるケース」
https://kachiel.jp/?p=41551
さて、今回は従業員不正が発覚したケースにおける
過去遡及処理について解説しましたが、
来週水曜の本メルマガでは最大の争点となる
「重加算税」について解説します。
従業員不正で法人が損失を被ったにもかかわらず、
法人に重加算税が課されるのか、その分岐点について
詳しく解説していきます。
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