税務調査で非違があった場合の3つの対応
※2021年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先日、税務調査に関して下記の質問がありました。
・相続税の税務調査
・賃貸物件の構築物が相続財産の計上漏れと指摘を受けた
・顧問税理士としては反論をした
・否認根拠が曖昧なまま調査官は否認指摘を主張
このように、見解の相違が埋まらない場合において、
「修正申告に応じるつもりはないので更正してください。」
と伝えるのは【喧嘩を売ってるようなものでしょうか?】。
調査官の否認指摘内容に納得できず、修正申告の勧奨に
応じないというのは、むしろ当然の話であって、かつ
こちらができる主張・反論を尽くしたのであれば、最終的に
「更正してください」と伝えるしか方法はありません。
税務調査において税務署が、(増額)更正ではなく
修正申告の勧奨に持ち込みたい理由は下記の要因です。
●税務調査の割当日数が短い(調査件数のノルマがある)
●更正するには税務署内の手続きなどが非常に煩雑
●理由附記に耐えうるだけの明確な根拠がない
●不服申立てや裁判にはしたくない
一方で、国税局の調査部など大法人を管轄する部署の場合、
むしろ更正が当たり前となっています。大法人であれば
訴訟まで視野に入れた対応をとり、安易には修正申告に
応じないこと、また国税局は1件あたりの調査日数を
かけることができるからです。
税務調査において非違がある場合、法的には
2つの対応に分かれます。国税通則法第74条の11
(調査の終了の際の手続)の第2項において原則として
更正するものとされており、その後の第3項において
修正申告の勧奨は「できる」と規定されているのです。
また、修正申告の勧奨(調査官の否認指摘に対して
納税者が納得する場合、修正申告を提出するよう勧める)
はあくまでも「行政指導」であって、修正申告の勧奨に
従わなかったという理由で不利益な取り扱いを受ける
ことがないことを行政手続法において規定されています。
行政手続法第32条第2項
行政指導に携わる者は、その相手方が行政指導に従わなかった
ことを理由として、不利益な取扱いをしてはならない。
以上から、調査官の否認指摘に納得できないのであれば
修正申告の勧奨に応じない=「更正してください」
と主張するのは当然のことですし、そう主張して
納税者側に不利益はありません。
加えてもう1つ、税務調査で非違があった場合の
対応方法があります。それは「いったん修正申告に
応じるものの、後で更正の請求を出す」というものです。
国税通則法第74条の11第3項でも、勧奨に応じた
修正申告に対して更正の請求ができることが明記されています。
更正された場合とは相違し、修正申告の勧奨に応じれば
不服申立てができないわけですが、その後に更正の請求をして
・再度審理のうえ認められれば還付(是認と同じ効果)
・認められなければ「「更正をすべき理由がない旨の通知」
を受けて不服申立てすることができる
ことになります。
税理士・会計事務所としては実務上、税務調査で
更正をされた経験がない・少ないことから、
修正申告の勧奨に応じず「更正をしてください」と
言いづらいように思えますが、否認指摘に納得もできないのに
修正申告を提出する方がよっぽど問題だと理解すべきです。
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