税務調査における「脱漏」の意味
※2019年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今回は国税が意図する重加算税の範囲、
特に「脱漏(脱ろう)」について解説します。
重加算税の基準として、国税通則法では
「隠蔽又は仮装」としか規定されておらず、
これに該当するかどうかの実務的な判断基準は
事務運営指針に委ねられているところです。
法人税における重加算税の事務運営指針には
下記のように規定があります。
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/hojin/100703_02/00.htm
「帳簿書類の作成又は帳簿書類への記録をせず、
売上げその他の収入(営業外の収入を含む。)の
脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること。」
この規定だけを読むと「売上の計上漏れ」も
該当するのではないかと考える方もいます。
なぜなら、売上の計上漏れをするということは、
当然帳簿に計上されていない状態だからです。
ここでは「脱ろう」と「除外」が併記されている
ことから理解できるとおり、「脱ろう」とは
「漏れた」という意味合いではなく、
「(意図的に)漏らした」という定義になります。
調査官の中には、「複式簿記である以上、
売上の計上漏れはないはず」、だからこそ
「売上の計上漏れ=脱ろう・除外」として
重加算税を指摘してくるケースが多いです。
確かに理論上、売上計上が漏れても後になって、
・請求書等から売掛金を拾う
・(後日)入金があれば売上を認識できる
・現金残高との照合をかける
などから、売上計上漏れが確認・是正できるはず
ということなのでしょうが、会計実務が
そんな単純なことではないのは誰でもわかります。
特に中小企業の場合、経理・会計の業務フローが
確立されているわけではありません。
調査官から「これは脱漏ですね」と指摘されたら、
「計上漏れ」と同じ意味合いと勘違いし
受け入れてしまう人が多いのですが、
明確に違うことを主張・反論する必要があります。
調査官が重加算税にするために使う
言葉(キーワード)はこのようなものです。
「脱漏」「除外」「不正」「故意」
重加算税にならないためには、
次のような言葉を使って置き換えていくべきです。
「漏れ」「ミス」「エラー」「うっかり」「勘違い」
「除外」という言葉は重加算税になりそうな
ことは多くの人が理解していると思いますが、
特に「脱漏」という言葉は意味を取り違えている
人が多いので、ぜひ注意してください。
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