税務調査の対象期間は何年なのか?(個別的規定)
※2021年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回は前回から引続き、
税務上の除斥期間(賦課権の時効)について解説します。
前回は、税務調査の対象期間は更正・決定など賦課権の
除斥期間と連動していることを解説しました。
このことから、税務調査の期間・遡及年数を正しく理解するには
除斥期間を正しく理解しなければならないことがわかります。
まず、除斥期間に関する大筋としての理解ですが、
【原則】国税通則法の除斥期間
⇒
【例外】個別税法に定める除斥期間
となります。個別税法に規定がない場合は国税通則法に
定める除斥期間が適用、個別税法に規定がある場合は、
個別税法が適用されることになります
(一般法と特別法の関係となっています)。
ですから、まず国税通則法に規定される除斥期間を取り上げ、
その後に個別税法の除斥期間を列挙します。
【国税通則法の除斥期間】
●更正・決定・減額更正など:5年
(ただし、法人税に係る純損失等の金額についての更正は、
平成30年4月1日以後に開始する事業年度において生じるもの
については10年、同日前に開始する事業年度については9年)
●脱税(偽りその他不正の行為)がある場合:7年
※脱税の7年については来週のメルマガで詳細に解説します
【個別税法の除斥期間】
●贈与税:6年(相続税法36条第1項)
●移転価格税制に係る法人税の更正決定等:7年
(措置法66条の4第27項)(ただし令和2年4月1日前に
開始した事業年度については6年)
※「国外転出等の特例」など細かい規定は省略します
さて、税務調査には直接関係しませんが、実務上よくある
事例として、無申告者からの依頼により期限後申告を
提出する場合に何年分すべきかという論点があります。
これもよく質問を受けるのですが、上記のとおり
原則的な除斥期間が5年であることから、
5年(期)分の期限後申告をすることになります。
なお、たとえ7年間無申告であったとしても、
期限後申告は5年分でいいと考えられます。
東京局法人課税課が出している「法人課税内部事務質疑応答集」に
「7期分の自主修正があった場合の取り扱い」という項目があり、
「当該申告書は無効であり、取り下げをしょうようする。
応じない場合は、申告書の効力のない旨の通知を行う。
偽りその他不正の行為に基づく場合以外の更正又は決定は
法定申告期限から5年を経過した日以後は行うことができない
とされる70条の規定は、課税庁のみを拘束するものであり、
納税者までをも拘束するものではない。」
とあることから、自主修正申告と同じく期限後申告でも、
除斥期間を7年とする規定は納税者を拘束しないからです。
来週金曜の本メルマガでは、国税通則法に定める
脱税の場合の除斥期間「7年」について解説します。
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