税務調査の対象期間は何年なのか?(期間の延伸)
※2021年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回は税務調査の
対象期間が事前通知の年数より延伸される要件を解説します。
事前通知では3年分であった調査対象期間が、
実地調査の流れにより調査官から4年以上遡及すると
される要件については、国税通則法第74条の9第4項
に規定されていますが、これについては本メルマガでも
何度か取り上げていますので、下記の記事(私が執筆した
過去メルマガの転載)をご覧ください。
さて、上記記事に関して、一部の専門家からは
「拡大解釈」という見解があるようで、そのような
見解を出す方々は、実質的には要件などなく、
税務署(調査官)の裁量により調査対象期間を
延伸できる(納税者はそれに従わざるを得ない)
という見解をもっているようです。
確かにおっしゃる通り「非違が疑われることとなった場合」
には、税務調査の手続きに関する法令解釈通達、
また事務運営指針にも明確な規定がないことから、
解釈論になりやすい論点かとは思います
(各税務調査の事実関係によって相違する)。
では、上記記事にはない観点から私の見解を
解説しましょう。前提として、事前通知では
3年分で実地調査が実施されたとします。
●何も否認事項がないケース
この場合において、調査官が「このままでは増差がでず、
是認になってしまうので4年以上前も調査対象にして
ください」と言えば、それに対して断ることができます。
なぜなら法律の規定にある「非違が疑われることと
なった場合」には該当しないことが明確だからです。
●2期前に単発の売上計上が漏れていたケース
この場合においても私の見解では
調査対象期間が延伸できないと考えています。
このケースではあくまでも、単発の売上漏れであって、
上記記事にある「その誤り・漏れが、調査対象期間より
前の期間にも同様に存在することが想定される」
場合に該当しないからです。
●3年間の各年すべてで売上計上漏れがあったケース
この場合においてはかなり微妙だと考えています。
調査官が「3年分調査して毎期売上計上漏れが
あるということは、4年以上前も同じように
売上が漏れているだろう」と考え・判断も、
むしろ当然だろうと考えるからです。
特に、特定の顧客・取引先に対する売上計上漏れが
毎期続いているようなケースでは、調査対象期間の
延伸は免れられないでしょう。
税務実務においては常に解釈論がつきまとうとはいえ、
事前通知の年数を超えた調査対象期間の延伸については
法律の規定および国税の内規があるわけですから、
税務調査ではその要件に該当するのかを確認し、
調査官の不当な主張には反論しなければならない
ということに何ら変わりはありません。
これを機にぜひ、調査対象期間の延伸について
理解してください。
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