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2022.03.04

税務調査中に時効になる年分がある場合の対応

※2021年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

税務調査対応のなかで、直近で同じ質問を2回受けましたので、
今回はそれを解説します。「税務調査中に時効になる年分が
ある場合の対応」についてです。

個人の税務調査で、

・昨年から調査が開始されているが長引いている

・5年分が調査対象

・3月15日までに修正申告をする意向はない、
もしくは金額等がまとまらないので修正申告できない

のような調査事案です。この場合、3月15日を超えると
最終年分は税務上の時効になるため、どのような
対応になるのか、という疑問ですね
(もちろん考え方は法人の場合でも同じで、法人では
各社の申告期限で考えてください)。

まず、税務における課税上の時効ですが、
更新(中断)や完成猶予(停止)などの要件はなく、
5年(偽りその他不正の行為がある場合は7年)の
期間が経過すれば絶対的に時効となりますので、
税務調査に着手・継続しているなどの理由によって
時効にならない、ということはありません。

このような調査事案の場合、調査官は
少なくとも時効を迎える年分だけでも
修正申告を提出するように勧奨してきます。

もちろん、調査官が提示してくる修正申告の内容に
納得できるのであれば、時効を迎える前に
修正申告を提出してもいいわけです。

調査官としては、時効になると課税できないことから、
時効前だからこそ否認指摘の項目を減らすなど、
妥協案を提示してくる場合もあります。

ここは交渉の余地が大きいので、結果として
納税者有利に働くケースも多くあります。

一方で、調査官の指摘に納得できないなど
修正申告の勧奨に応じない場合、国税側がとれる
対応方法は2つしかありません。

●新たな調査年分を追加する

5年前の年分が時効になった後、新たに申告された
年分を調査対象に加えるという対応です。

修正申告が提出されないことから、税務調査は
結了せずに継続することになりますから、
直近年分が追加されて、調査対象年分は
5年を維持されるというのが一般的な対応です。

●更正する

修正申告が提出されないことから、本来的には
時効前に国税は(増額)更正することになります。

ただ現実的に考えると、時効前に更正になる
事案もそこまで多くはないです。

更正するとすれば、調査官は前もって更正の準備を
しておかなければ時間的に間に合いません。
例えば、3月15日に時効を迎えるのに
2月下旬の段階で更正の準備をしていなければ、
更正はできないでしょう。それほど更正という
行為は手続きが面倒なものです。

また、根拠・金額の算出を含めて、課税要件が
出揃っていないと更正することはできません。

調査が長引いているということは、金額の算定が
困難であるとか、見解の相違が埋まらないという
ことでしょうから、更正するだけの課税要件を
きちんと揃えるのが難しい状況にあるはずです。

ですから、修正申告に応じなければ
そのまま時効を迎えるというケースが多いのです。

立会いしている税理士からすると、調査中に
時効を迎える年分があると対応・判断が難しい
場合もありますが、

・時効前に修正申告を提出する場合、
否認指摘の取下げなど、交渉を強くする

・あえて修正申告を提出した方が得なのか、
年分を追加されても継続してもいいのかを
顧問先に意思確認する

ことが必要になります。

ぜひ、参考にしてください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

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