粉飾の正しい是正法(税務的観点)~中編~
※2024年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガに引き続き、今回も
「粉飾を税務上で是正する方法」を取り上げます。
さて、前回の結論は、粉飾を是正したければ
進行期以降で是正することは否認・時効リスクしかなく、
更正の請求をするべきだと結論付けました。
まず、粉飾を是正する更正の請求をする際に
最も気を付けるべき点は「その年数」です。
更正の請求の対象(除斥)期間/期限が
●法定申告期限から5年しかできない
もしくは
●本来は赤字(純損失)であるが粉飾して
有所得なので5年超はできない
と思い込んでいる方が多いはずです。
通常の更正の請求=税額が過大で還付を受ける更正の請求
については法定申告期限より5年とされていますが、
「法人税に係る純損失等の金額についての更正の請求」
については【10年】とされていることに注意してください。
国税通則法第23条第1項(更正の請求)
納税申告書を提出した者は、次の各号のいずれかに
該当する場合には、当該申告書に係る国税の
法定申告期限から5年(第二号に掲げる場合のうち
法人税に係る場合については、10年)以内に限り、
(略)更正をすべき旨の請求をすることができる。
二 前号に規定する理由により、当該申告書に
記載した純損失等の金額が過少であるとき、又は
当該申告書に純損失等の金額の記載がなかつたとき。
「更正・決定の除斥期間、更正の請求期間」
https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/tins/n04_2.pdf
この条文規定=更正の請求の要件と期限から、
下記のように「純損失等の金額が過少であるとき」は
10年間更正の請求ができることはすぐわかります
(進行期をN期とします)。
(N-7)期:申告所得▲100
(うち仮装経理部分300=本来所得は▲400)
純損失が増えるケースの更正の請求については、
「10年間できることを知ってるか/知らなかったか」
となるわけですが、判断に迷うのは粉飾のように
当初申告が有所得のケースです。
(N-7)期:申告所得100
(うち仮装経理部分300=本来所得は▲200)
結論から書くと、このケースにおいては
●純損失額=▲200とする更正の請求ができる
(法定申告期限から10年以内)
●欠損金▲200として翌期以降に繰り越される
(平成30年4月1日以後に開始した事業年度
において生じた欠損金額の繰越期間は10年)
●ただし、当初申告の所得額である「100」
にかかる税額は還付されない=時効
(有所得部分は純損失に該当しないため)
つまり、当初申告が純損失だから更正の請求が
5年超できるのではなく【更正後の本来の/正しい
所得が純損失だから】更正の請求は
10年以内であればできるという理解になります。
なお、一般的には粉飾している時期は単年ではなく
複数年かとは思いますが、考え方は同じです
(繰越欠損金が連鎖するので難しくはなりますが)。
上記のような「更正の請求の要件と期限」については、
ネット記事どころか、税務専門書でも詳しく
解説されている書籍は皆無です。実際に、私も
あらゆるサイトや書籍を調べましたが、
ここまで解説されているものはありませんでした。
また、ここでは取り上げなかった「更正の請求で
発生した繰越欠損金はどの期間まで充当されるのか」等、
更正の請求についてはさらに深く理解する必要があります。
※そもそも「更正の請求が5年超できる」要件を
知らなった方は顧問先の損害額が大変なことになります
本日販売を開始した
~実務頻出なのに理解が難しい~
「更正の請求の要件と期限+事例解説」
https://kachiel.jp/lp/20240904_dvd/
は上記の論点をさらに詳しく解説していますので、
ぜひご覧になってください。
今回は粉飾を是正する更正の請求に関する期限について
解説しましたが、来週水曜の本メルマガでは、
この更正の請求をするにあたって【特有の論点】や、
実務上注意すべき点を取り上げます。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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