自家消費の計上と必要経費の按分
※2020年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
所得税の確定申告における注意点に関して解説していますが、
今回は「自家消費の計上と必要経費の按分」です。
自家消費(家事消費)に関しては、誤って認識
している方が多いので触れておきます。
自家消費は飲食店などの税務調査でも論点に
なるわけですが、所得税法第39条の規定により、
【棚卸資産を自家消費した場合】に
収入金額に計上しなければなりません。
飲食店においては、自分で(商品である)食事を
飲食した場合には収入金額に計上するわけですが、
例えば、医者が親族を無償で診療した場合に、
収入金額に計上しなければならないという
話ではありません。棚卸資産が絡まないからです。
また、自家消費として計上すべき金額ですが、
自身で申告した場合は、所得税では販売価額の70%、
消費税では50%計上しておけば認められます
(所得税基本通達39-1・39-2)。
「No.6317 個人事業者の自家消費の取扱い」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6317.htm
しかし、申告において計上せず税務調査で
指摘された場合は、原則通り販売価額での
計上となりますので、自家消費については、
申告時に(概算であっても)計上しておくべき
項目といえるでしょう。
個人事業主の税務調査選定においては、
業種によって自家消費の計上がない申告は
狙われる対象となりますので注意です。
また、所得税法と法人税法における考え方の
違いを認識できていない方も多いと思います。
法人税においては、あくまでも法人は営利目的
であることから、無償での役務提供がある場合、
適正価額で売上に計上しなければなりません。
一方で、所得税においては自家消費を除き、
無償での役務提供などは認められますが、
その分だけ必要経費の按分計算は必要となる
ケースがあります。
例えば、個人が所有する賃貸マンションの
1室を親族に無償で貸与していた場合、
賃料相当額を収入に計上する必要はありませんが、
減価償却費・固定資産税などの必要経費は
空室分だけ按分計算する必要があります。
10室のうち1室を無償貸与していた場合、
減価償却費・固定資産税などの共通経費は、
10分の9しか必要経費になりません。
上記の自家消費計上と、必要経費の按分に
関する考え方は誤認しやすいので
注意しながら申告業務をしてください。
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