裏金は誰に帰属するのか?(その3)
※2017年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
日本中央税理士法人の見田村元宣です。
今回は「裏金は誰に帰属するのか?(その3)」ですが、
裁決(平成29年3月10日)を取り上げます。
まず、結論からお伝えしますが、
本裁決は「取引先から元代表者Jに支払われた金員は、
請求人(土木建築工事業等を営む同族会社)に帰属する収益とは
認められないと認定した事例」です。
まずは、時系列関係を整理します。
〇平成〇年〇月〇日:Jが全額を出資し、請求人が設立
〇平成8年4月〇日:Jが請求人の代表取締役を退任
〇平成13年6月〇日:Jが取締役を辞任
〇平成15年9月〇日:Jが再び請求人の取締役に就任
〇平成21年6月〇日:Jが辞任
〇平成23年3月〇日:Jの娘婿Gが請求人の代表取締役に就任
なお、Jは「遅くとも」Gが請求人の代表取締役に就任した
平成23年以降、請求人の株式を有していませんでした。
〇平成23年頃:請求人はL社から本件工事における解体作業を請け負った
〇平成23年10月27日:請求人とL社は本件工事の解体現場で
発生する金属スクラップ等の有価物を買い受ける旨の継続的売買契約を締結
〇平成23年10月31日:請求人とM社は請求人がL社から買い受けた
金属スクラップ等をM社に売り渡す旨の継続的売買契約を締結
〇平成24年1月19日:非鉄金属が搬出され、請求人がL社から買い受け、
M社に売却
〇M社所属の請求人の担当者であったNは、Jから金属スクラップ等の中に
希少金属である○○が含まれていたことを理由に、相応の金額の支払を
求められ、N個人が出捐してP社を振込名義人として支払った。
なお、これに関する支払明細書は「請求人宛」となっていました。
これらの状況の下、国税不服審判所は下記と判断しました。
〇売却及び本件金員の支払がされた平成23、24年当時、
Jは請求人の役員や従業員ではなく、株主でもなく、
請求人とは別個独立の個人事業を営んでいたものである。
〇本件売買契約や本件工事における解体作業に関し、
飽くまで仲介人として関与したにとどまる上に、
本件金員はN個人が出捐し、P社を振込名義人として、
請求人を経ることなくJに直接支払われたものである。
〇Jの個人的な使途に充てられたものである。
〇P社の帳簿上もJに対する支払として経理処理されている。
〇本件当時、Jは請求人の役員や従業員等の地位にあったものではなく、
本件売買契約や本件工事における解体作業に関し、飽くまで仲介人として
関与したにとどまることからすれば、Jの行為を請求人の行為と
同視することはできない。
〇支払明細書がN、P社ないしM社から請求人に送付されたことを
認めるに足りる証拠はない。
〇支払明細書には、請求人とM社の間における金属スクラップ等の売買が
今後も継続されることが、本件金員の支払条件である旨の記載があることが
認められるが、支払明細書は、請求人への送付の有無や記載の趣旨が
判然としない。
〇Jは請求人に対し一定の影響力を有していたことがうかがわれ、
本件売買契約にも仲介人として関与していたことに照らすと、
本件売買契約の継続を目的とする本件金員をJに対して支払うということも、
十分首肯できる。
〇本件金員が本件売買契約の継続を目的とするものであることは、
これが請求人に対して支払われたことの決め手にはならない。
いかがでしょうか?
土木建築工事業等などの業界は不透明なお金の流れがあることも多く、
税務調査で問題になることもあるでしょう。
そして、そのキックバックが法人に帰属するか否かは事実認定の問題です。
しかし、実際の税務調査では
〇法人に帰属する
〇重加算税の対象にもなる
と指摘を受けることが多いでしょう。
しかし、それは間違っている可能性もあるので、
税理士として事実関係を精査する必要があるのです。
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