記帳水準による加算税の加重措置(令和4年度税制改正)
※2022年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今年最後の水曜メルマガは、先日国税庁より
詳細なQ&Aが公表された、税務調査における
「加算税の加重措置」について解説します。
該当するQ&Aは下記です。
「帳簿の提出がない場合等の加算税の加重措置
に関するQ&A」(令和4年10月 国税庁)
まず、上記Q&Aは「帳簿の提出がない場合~」という
タイトルになっていますが、この過重措置の目的は
「記帳水準の向上に資する観点から、記帳義務の
適正な履行を担保するため、帳簿の不保存や記載不備
について未然に抑止するため」ですから、実務上は
帳簿の記載等が不十分である場合が論点になります。
また、制度の概要に関しては、下記の財務省・
税制改正資料がわかりやすいのでこちらをご覧ください。
「記帳水準の向上に資するための過少申告加算税・
無申告加算税の加重措置の整備(令和4年度改正)」
さて、本加重措置の概要を理解したうえで、
重要な論点をピックアップしておきましょう。
●重加算税が課される場合は加重対象になりません
あくまでも、帳簿の記載等が不十分である場合に
加算税を5%もしくは10%加重するものですから、
重加算税に加重されることはありません。
つまり、対象は仮装隠ぺいなどをしていないが、
売上のうちかなりの割合が計上漏れとなっている
ずさんな納税者ということになります。
●税務調査で加重されるかが決まる
あくまでも税務調査における判断になりますので、
自主修正申告などは対象になりません。
●判断の対象は「売上げ(業務に係る収入を含む。)
に関する調査に必要な帳簿」とされています
一般的には「仕訳帳」「総勘定元帳」などが
対象ですが、記録&原資資料で売上が確認できる
場合などは本措置の対象にはなりません。
●期ズレは対象にならない
「帳簿への記載等が不十分」であり多額となると、
期ズレが最も心配な論点になるわけですが、
期ズレで翌年もしくは進行期に計上されている限り、
本措置の対象にはなりません。
なお、本措置については「令和6年1月1日以後に
法定申告期限が到来する」各税目について
適用されることになります。
申告後の税務調査において論点になることから、
例えば所得税については、令和5年分の申告後となる
令和6年春以降の税務調査で問題になり得るわけ
ですが、会計処理状況がずさんな顧問先に対しては
本措置の説明を含めて、処理状況の改善を
促す良いきっかけになるかと思います。
ぜひ、国税庁Q&Aの詳細まで参照してください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
著者情報