調査と実地の調査における手続きの違い
※2021年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回は「調査」と
「実地の調査」において、調査手続きの何が
具体的に相違するのかを解説します。
今年4月16日配信「税務調査の種類・類型を理解する」で
「調査」と「実地の調査」の違いを解説しましたが、
簡単に振り返っておくと、「調査」の方が広い概念で、
「調査」の形態の一部として「実地の調査」があります。
「実地の調査」は一般的に税務調査と呼ばれるものを
指しており、臨場をともなうものをいいます。
詳しくは下記の記事(過去メルマガ)をご覧ください。
「調査」という用語は国税通則法の中で全般的に
用いられている一方で、「実地の調査」という用語は
国税通則法第74条の9~11の中で使用されています。
具体的には、
・国税通則法第74条の9:事前通知
(国税通則法第74条の10:無予告調査)
・国税通則法第74条の11:調査の終了の際の手続
となっています。ここでは主要な手続きの違いに
ついて取り上げます。
●「調査」であれば事前通知は要らない
納税者の事業所に行くなど、臨場を前提とする
実地の調査の場合、事前通知は法定化されていますが、
臨場をともなわない調査(電話・書面連絡など)では
事前通知が不要とされています。
●「調査」であれば調査終了の際の手続きが要らない
実地の調査において否認事項がなかった場合は、
是認通知書を出すことになっていますが、調査の場合
是認通知書は出されません。
一方で、実地の調査において否認事項があった場合は、
その額・理由、さらには不服申立てをすることは
できないが更正の請求をすることはできる旨を
調査官が説明することになっていますが、
調査の場合はこれらの手続きが不要とされています。
●再調査
上記の記事(過去メルマガ)にもありますが、
実地の調査が実施された年分については、
要件を満たさない限り、再調査は実施されませんが、
調査はこれに含まれないことになります。
なお、調査とは広い概念で、提出された申告内容に
疑義がある場合の問合わせなどは、それが
臨場をともなわない場合であっても調査に該当します。
問合せの結果、誤りがあれば是正を促すことも
目的としているからです。
更正の請求などはその典型ですが、他にも
消費税の還付申告がこれに該当します。
消費税の還付申告については、年々審査が厳しくなって
いますが、法律構成は下記となっています。
消規第22条第2項:付表2の添付義務
消規第22条第3項:「仕入控除税額に関する明細書」
⇒
税務署が必要と認める場合は、控除対象消費税額を
証明する書類または帳簿の提示・提出を求めることが
できる(消令第66条)
この「書類または帳簿の提示・提出を求める」は
調査に該当しますから、上記のとおり、
この場合に事前通知等の手続きは行われません。
また、調査の結果として疑義が解消されない場合など、
実地の調査の移行することもあります。この場合は、
改めて事前通知が行われることになります。
「調査」と「実地の調査」を普段の実務で意識することは
ほとんどないと思いますが、手続きの相違でモメる
こともありますから、ぜひ整理のうえ理解してください。
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