調査内容の申送りは本当に効果があるのか?
※2016年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
調査官の中には否認項目がない場合に、
意地でも否認指摘をしようとする担当もいます。
ヒドいケースになると、「これを否認させてくれれば
調査は終わりますから」と言い出す調査官もいます。
これに反論すると、調査官はこう切り出してきます。
「次回の調査には反映されないように
申送りをしておきますので影響はありませんよ」
重加算税を取りたい場合はこうです。
「次回の調査で選定されにくいように
きちんと申送りしておきますから今回は重加算税で」
ここにいう「申送り」とは効果があるのでしょうか?
調査官が言う「申送り」とは口頭ではなく、
税務調査の履歴を残す「調査ファイル」に、
紙としてきちんと残しておきますよ、という意味です。
この紙が残されていれば、次回以降の税務調査に
加味されるのか、が論点です。
結論からいうと、申送りに効果があることは
【ほぼない】かと思います。
まず、本当に調査官が紙に残したとしても、
調査ファイルは7年間保存なので、それ以前に
調査されたものは、そもそも参考にできません。
次回の調査選定が何年後にあるかはわかりませんから、
この点が何も担保されていないことが明白です。
さらに、過去7年以内に前回の調査があったとしても、
調査を選定する段階で、いちいち調査ファイルの中身を
検討する方がむしろ稀です。
調査に行くことが決定すれば、前回の履歴である
調査ファイルを見ることはよくありますが、
調査選定の段階で、すべての調査ファイルに
目を通すなど、非現実的な話です。
また、調査ファイルを見て調査選定をしたとしても、
そこに書かれた内容を加味するのかどうかなど
誰にもわかりません。
申送りの内容もまさか「本来は重加算税ではないのに
重加算税で納得してもらいました」とは
書いていないでしょう。そんなことを書けば
別の意味で(会計検査院などで)問題になります。
「きちんと申送ります」という言葉も、
どういった文章で残されるのか、甚だ疑問です。
さらに・・・重加算税を受け入れた場合、
紙に何を残そうと、KSKには履歴が残ります。
KSKが調査先を選定する基準の重きは、
過去の重加算税履歴が大きな要素ですから、
結局のところ、申送りという紙に何が残ろうが、
システム上は選定されやすくなることは変わりません。
結局のところ「申送りをするから課税させて」は、
ウソとまでは言いませんが、納税者側に立てば
実際の効果はほぼ無いことになります。
何としても申告是認で終わりたくない、
重加算税をとりたい調査官の適当な言い分である
「申送りします」は信じない方がいいでしょう。
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