調査官が何を見始めたら対応が楽になるのか?
※2017年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社InspireConsultingの久保憂希也です。
『市街地価格指数適用替えの更正の請求はできない』でもお伝えしましたが、
先日、税務特化型不動産鑑定(株)主催の会員限定セミナーで、
元税務署長まで歴任された山形富夫税理士に講師いただきました。
実は山形税理士は、私が国税現職時代の専科研修で
税務大学校の教授をされており、私の妻の担当教授でも
ありました(私も講義を受講していました)。
セミナー後の懇親会では、「調査官が税務調査で
何を見るのか」という話題になりました。
私は現職時代、(今でいう)留置きして、
よく上司や先輩から叱られていました。
特に、帳簿を預かって帰った場合です。
「資料をそんなに持って帰ってきて何をしたいの?」
「帳簿なんていくら見たって漏れなんて見つからない」
若手調査官からすれば、調査現場ですべてを
確認する時間がないから、税務署に資料を持って帰ると
判断したわけですが・・・
確かに、帳簿をいくら見ても、消費税などの
軽微な誤りは見つかるかもしれませんが、
計上漏れ・脱漏を見つけることはできません。
なぜなら、仕訳がきられていて、それを
積み上げれば申告された決算書になるわけです。
税務調査の基本は「調査」であって、
「監査」ではありませんから、仕訳などの
処理が正しいかどうかを確認するのではなく、
「処理されていないものを見つける」ことになります。
ですから、納税者の立場になって考えると、
原始資料をひたすらチェックする調査官は
調査能力が高く、いきなり帳簿の確認から
入ってくる調査官は調査能力が低いと判断できます。
また、原始資料を見ていた調査官が、
全般的に帳簿調査に移行したとすれば、
いったんは漏れ・脱漏などが見つからなかったと
判断できますので、その後の調査対応は楽ですし、
それほど大きな誤りはないと考えてもいいでしょう。
上記の山形税理士も、現在調査立会いをする際に、
原始資料の確認か、帳簿の確認かで
調査が山を越えたかどうか判断しているそうです。
「帳簿の確認になれば、もう調査対応は楽」
とおっしゃられていました。
私がよく叱られていた留置きですが、
税務署内の現場では、できる限りしない方向で
指導・教育がされています。
漠然とした言い方にはなりますが、留置きを
頻繁にする調査官は調査能力が低いと
税務署内でも判断されています。
また、留置きをすると資料紛失などの
トラブルにつながる可能性がありますので、
情報管理の点からも、税務署内はナーバスです。
留置きという行為からも、調査官の
調査能力をある程度判断することができます。
税務調査は毎回毎回が出たとこ勝負になるのは
調査官の調査能力にバラつきがあるからです。
裏を返せば、調査官の調査能力をある程度でも
判別できれば、調査対応は楽になるとも言えます。
原始資料へのこだわりか、帳簿調査かによって
見極めできることもありますので、ぜひ参考に。
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