調査官の裁量範囲と統括官の判断を要する場合
※2020年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
税務調査の立会いをしながら、
「この担当調査官自身にどこまでの
裁量があるのだろうか?」
「最終交渉までしても大丈夫なのか?」
と悩むケースも多いことでしょう。
「調査官が何年目だから」「上席だから」など、
税務署内で明確な裁量の範囲が決められている
わけではないものの、調査現場における
調査官の裁量と、上司である統括官の判断を
要するケースは概ね下記のように分類されます。
●明らかな否認事項
売上の漏れや経費ではない(個人的支出等)、
見解の相違が起こらない・明らかな否認事項
については、調査官の裁量範囲内であって、
統括官が確認・判断しません。
ただし、増差所得の総額が多額になるなど、
税務署内で「重要事案審議会」(通称:重審)
が開催されるような調査事案については、
調査官の裁量から外れるケースもあります。
●重加算税
重加算税の賦課については、統括官の
確認・判断が必要となり、調査官だけの
判断で賦課決定はできません。
●見解の相違がある論点
その他、否認指摘に納税者側から反論が
あった論点など、見解の相違がある項目
については、統括官の確認・判断が必要です。
特に、法令解釈に見解の相違があるなど、
審理担当の確認・判断が必要となる場合は、
調査官は統括官を含めて検討を要します。
●最終的な調査事案全体の交渉
明らかな否認項目ではあっても、
調査全体を「丸く収めるために」あえて
否認をしない・取り下げるなど、最終的な
交渉ごとに関しては、ベテランの上席であれば
裁量に任せられている部分も多く、若手であれば
逐一統括官の判断を仰ぐ場合が多いですが、
これらは統括官の方針に依存します。
一般的な調査事案で、重加算税が論点として
挙がっていない場合、調査官の裁量だけで
調査が結了することが多いので、
交渉事に関してもいったんは調査官に
見解をぶつけてみるべきでしょう
(調査官でラチがあかない場合は
統括官にぶつけるのは交渉として正解です)。
なお、調査担当が「特官」の場合における
裁量については下記をご覧ください。
担当調査官にほとんど裁量がないと
思っている税理士も多いようですが、
上記のように裁量はかなりありますので、
項目を分類して交渉すべきでしょう。
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