調査手続き違反を問うなら調査内で行うべき
※2022年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
本メルマガでは、税務調査の手続きに関して
国税通則法第74条の2(質問検査権)以降の
各項目を何度も・詳しく解説してきましたので、
調査手続きに詳しくなった方も多いと思います。
・質問検査権の範囲から逸脱
・無予告調査の適正性
・調査終了の際の手続き
・再調査の規定
・修正申告の勧奨 など
一方で、税務調査において手続き違反があった場合、
具体的にどのように対応すべきかは、調査事案ごとに
相違してくるでしょう。
調査に立ち会う税理士として、調査手続き違反が
あった場合の対応で、避けた方がいい行動は、
手続き違反を調査官に問う
⇒
調査官は手続き違反でない旨を反論
(もしくは手続き違反でも調査全体に
影響を及ぼさない旨を主張してくる)
⇒
手続き論に終始してしまう
(否認指摘もしくは増差所得に触れない)
⇒
最終的に更正(処分)される
⇒
調査手続きの違法性・瑕疵を事由として
課税処分の取り消しで不服申立てする
のように、調査手続きだけに固執するケースです。
公開裁決事例を調べてみると、税務調査の中で
「一部」手続き違反があった場合であっても、
更正など処分が取り消しになった事案は皆無です。
調査手続きの違法性・瑕疵について、納税者が勝った
判決・非公開裁決などもあわせて参考にすると、
課税処分が取消し/取消しにならない基準としては、
調査手続の瑕疵は【原則として】
課税処分の取消し事由とはならない
ただし、例外的に
調査手続きに【趣旨目的に反するほど重大な違法性】
がある場合に取消し(の可能性がある)
というのが通説となっています。
この論点に関しては、調査手続きが法定化された
後の裁決・判決まで検証した下記の論文に
詳しく解説されています。
また、上記サイトの一覧(図)が非常に
うまくまとまっていますので、下記URLに
拡大図をそのまま載せておきます。
https://kachiel.jp/sharefile/220720procedure-list224184.pdf
上記のとおり、手続き違反・瑕疵を問い続ける
ことは得策ではない(=不服申立てしても
負ける可能性が高い)ことから、税務調査内で
(特に統括官などに対して)
●調査手続き違反であることを根拠をもって明示
●手続き違反を追求しない代わりとして、
否認指摘の一部を取下げてもらうなど、
バーター取引として交渉の材料に使う
ことが重要になります。
調査官(税務署)側も、「出るところに出れば
勝てる」とはいえ、現場レベルでは手続き違反を
追及されると当然に問題になりますので、
一部否認指摘の取下げなど、バーターには
応じる可能性が高いでしょう。
あくまでも調査では、手続き論に終始せず、
増差に反映させるよう交渉することが大事です。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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