譲渡所得取得費不明の場合で更正の請求ができるケースできないケース
※2019年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
12月から3ヵ月間かけて、更正の請求を中心に
当初申告の是正措置を解説してきましたが、
今回は本シリーズ最後で、かつ確定申告
(譲渡所得)における要注意ポイントを解説します。
譲渡所得の計算上、取得費が不明である場合、
一般的には5%の概算取得費を用いることが多い
とは思いますが、この場合95%もの譲渡益に
なることで、不合理になるケースが多いことから、
「市街地価格指数」から算出された
概算取得費を用いることも普及したと思います。
「平成12年11月16日裁決」
http://www.kfs.go.jp/service/JP/60/19/index.html
弊社でも過去、いくつかのセミナーで
この内容を取り上げてきました。
ここでは、市街地価格指数を用いることが
適正だという前提にたって解説を続けます。
いったん当初申告で5%の概算取得費適用した後に、
「市街地価格指数」の方が有利だとしても、
更正の請求による適用替えはできません。
なぜなら、更正の請求は、正しい処理から
正しい処理への変更が認められないからです。
※12月7日配信メルマガ「更正の請求が
できる要件・できない例」をお読みください
5%の概算取得費を用いることも正しく、
市街地価格指数を用いることも正しいことから、
更正の請求の要件を満たさないことになります。
ですから、当初申告ではできる限り
有利な概算取得費で申告する必要があります。
さて、次に実務上よく起こる問題ですが、
申告時に取得費が不明だったので5%の
概算取得費で申告したものの、後になって
取得費の実額がわかる資料が発見された場合、
更正の請求をすることができるのでしょうか。
5%の概算取得費にかかる法律規定は
租税特別措置法31条の4第1項にありますが、
このただし書きにおいて、実際の取得費が
証明された場合には、実際の取得費とする
と規定されています。
なお、この規定における
「昭和27年12月31日以前から」の部分は、
「昭和28年1月1日以降」に拡張されています
から、5%の概算取得費も適用も、
ただし書きの適用も直近の譲渡であったとしても
適用になりますから、法解釈には注意してください。
以上から、当初申告で5%の概算取得費を
適用しておいて、後になって資料があった場合、
更正の請求によって取得費を実額に
適用替えすることができるわけです。
確定申告期限まであと半月です。
更正の請求ができる場合とできない場合で、
リスクがまったく違ってきますから、
これらの点には特に注意したうえで
申告業務に集中していただければと思います。
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