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2023.06.02

販売促進費と交際費の区分(前半)

※2022年6月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先日あった、税務調査に関する質問・相談において、
大きな括りでいう「販売促進費」が交際費になると
否認指摘を受けた調査事案がありましたので、
今回と来週の2回に分けて掘り下げて解説します。

まず、質問を受けた事案から紹介します
(なお、内容は簡素化しております)。

・商品を購入した一般消費者に対し、
キャッシュバックとして商品券を配布

・配布した商品券を販売促進費として損金計上

・調査官は「販売奨励金は金銭支給でない限り、
交際費に該当する」として否認指摘

本事案においては措置法通達にある「販売奨励金」
と「売上値引き」(もしくは広告宣伝費)が
完全に混同されています。

このキャッシュバックが売上値引き(か広告宣伝費)
に該当するのであれば金銭支給の如何にかかわらず、
交際費には該当しないことになります
(根拠:措置法通達61の4(1)-1)。

ここではまず、会計上の勘定科目である
販売促進費に該当するが、交際費に隣接する
であろう3つに区分してそれぞれを定義します。
なお、これらの支出目的はすべて
売上拡大のためであることは共通しています。

●売上割戻し(措置法通達61の4(1)-3)

売上割戻しは取引先に対して、事前の取り決めに
より販売実績に応じて支給される費用を指します。

例えば、取引数が100個までは@1万円であるものが、
100個を超えた場合は@9,000円、200個を超えた場合
@8,000円等、ある一定期間で取引数・額が多ければ
後になって戻入が生じるような取り決めです。

取引額に応じて支払うことから、広い意味では
「リベート」とも呼ばれる支出になります。

●販売奨励金(措置法通達61の4(1)-7)

得意先である取引先に対して、自社商品の
販売促進を目的として支出する費用です。

例えば、メーカー等が自社製品の販売促進のため、
特約店・小売店等に対して支給する金銭などで、
取引先の広告宣伝費を負担していることから、
原則として販売奨励金は交際費にはなりません
(販売奨励金が交際費に該当する論点に関しては
来週のメルマガで解説することにします)。

なお、売上割戻しとの違いは、事前の
取り決め・交付基準がない(なくてもいい)
という部分になります。

●売上値引き

顧客・取引先に対して、販売価格から
値引きを行うことで販売促進するものです。

また、商品を購入した顧客に対する
キャッシュバックも実質的な売上値引きである
ことから、法人税基本通達2-1-1の16
によって売上のマイナス処理となります。

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/180530/pdf/%EF%BC%B0.pdf

また、キャッシュバックにかかる消費税の処理は
「売上げに係る対価の返還等」に該当します。

「消費者に対するキャッシュバックサービスの課税関係」

ここまでの説明でわかるとおり、上記の
調査事案で調査官が言う「販売奨励金」が
根本的に間違っていることは明白です。

キャッシュバックの相手方が、自社商品を
販売してくれる「取引先・事業者」ではなく、
商品を購入した【顧客】であることから、
販売奨励金ではなく、売上値引きになる
=交際費ではない、という考え方です。

税務調査では、交際費の隣接科目に対して
厳しくチェックされるのは当然なのですが、
このように調査官が隣接科目の定義・理解を
していないケースが多いので注意が必要です。

来週は、交際費に隣接する販売促進費で、
交際費に該当してしまう要件・具体例を
掘り下げて解説しましょう。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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