貸倒損失:債権の一部を債務免除は認められるか?
※2020年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回までのメルマガでは、債務免除(債権放棄)
することで貸倒損失を計上する場合について
解説してきましたが、今回は債権(売掛金・貸付金)
の一部だけを債務免除することは認められるのか
について解説していきましょう。
まず、(税務ではなく)法律的に考えると、
債務免除は一部額であっても認められます。
債権放棄通知書に、
「平成○年○月○日に貸し付けた債権の
平成○年○月○日現在元本残額金××円のうち
金△△円については、これを放棄します」
など記載することにより、債権の一部だけを
放棄することができます。
では、債権の一部だけを債務免除した場合、
税務上の貸倒損失に該当するのでしょうか。
親子会社間の一部債務免除になりますが、
国税庁質疑応答事例に下記があります。
「親会社が毎期行う貸付債権の一部放棄
による経済的利益の供与」
ここで注意すべきは、一部債権額の放棄が
貸倒損失として認められるとされている一方、
・このままの状態を放置した場合には
子会社が倒産することは必至
・債権放棄することが子会社の倒産を
防止するために必要な条件である場合
などとされていることです。
つまり、言い方を変えると
【債権放棄しないと、相手方の倒産などで
債権全体が消滅するなど、自社が損をする】
【一部の債権放棄をすることが
自社にとって合理的と考えられる】
ような状況の場合に、貸倒損失として
認められるという理解になります。
債権の相手方が「第三者」である場合、
債権放棄をすることで損をするのは
自社であり、かつ相手方に利益供与する
特別な理由等がなければ、一部額を
債権放棄したことに合理性があるとされ、
貸倒損失が認められる可能性は高いでしょう。
第三者に対して、自社が損をしてまで
一部債権放棄することに、「利益供与」と
事実認定される根拠は無いはずです。
コロナショックにより取引先に配慮
しなければ倒産リスクがある場合など、
今後さらに一部の債権放棄をするケースも
増えると思いますが、その場合、
●債権放棄通知書に金額を明記する
(法律要件を満たす)
ことは当然として、税務調査で
否認リスクを下げるためにも、
●一部債権放棄をした、自社にとって
合理的な理由(一部債権放棄しなければ
全債権が回収できない状況など)
をきちんと説明できる状況を
作っておくことが大事になります。
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