貸倒通達9-6-1になぜ【破産】が載っていないのか?
※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
今週募集している、私に対して税務調査の質問・相談が
できる「税務調査の「裏」交渉術&極撰ノウハウ習得会」
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において、質問投稿が多い「貸倒損失」ですが、
今週から複数回にわたって重要論点を解説していきます。
まず、つい先日質問があった実例を挙げましょう
(類似事例が多いので、ぜひ注意してください)。
【実例】
法人(売上先が多数)に新たに関与(創業数十年)
⇒
実質的に回収不能の売上債権を精査(約10件)
⇒
5年以内に【破産】した取引先について
法基通9-6-1(1)に基づき更正の請求を提出
⇒
税務署より「破産は通達に載っていないことから
取下げして欲しい」旨の連絡があった
⇒
併せて「債権放棄すれば当期の損金になる」と
指導があり、順次取引先に対して債権放棄を実施
⇒
その後の税務調査において、調査官より
「破産した事業年度の貸倒損失となる」と否認指摘
(期ズレの時効によって否認額が発生する)
さて、これら一連の税務署とのやり取りの中でも、
実務・税務判断の論点は非常に多くあります。
●破産は9-6-1に該当しないのか?
●更正の請求を取り下げるべきだったのか?
●相手方が法人と個人では貸倒損失の基準が違うのか?
●税務署の指導通りに対応したのに税務調査での
否認はアリなのか?(信義則に反しないのか?)
今回は「では、なぜ破産が通達9-6-1に
載っていないのか?」について解説します
(他の論点は来週以降に掘り下げて解説します)。
通達9-6-1はいわゆる「法律上の貸倒れ」を
規定しており、その中でも(1)(2)において
「法的整理手続による債権の切捨て」がある場合の
貸倒損失を挙げているわけです。具体的には、
民事再生法・会社更生法・会社法(特別清算)の
3つがこれに該当することになります。
これらは裁判所の監督のもとに行われる法的な
整理手続であって、債権の切捨てという手続を
伴うものである以上、切り捨てられることになった
債権額が会計・税務上の貸倒損失になることに
疑義を挟み込む余地はないでしょう。
一方で、破産法の適用を受けた破産手続きの場合、
上記の法的整理手続と異なり、配当されなかった部分の
破産債権を法的に消滅させる免責手続はありませんので、
債権の切捨てという取扱いがありません。
この法的手続き(におけるプロセス)の相違から、
本通達には「破産」が載っていないわけです。
つまり、法的手続き上で債権の切捨てがない以上は
通達に載せることができない、という解釈です。
次回は「取引先の破産はいつ貸倒損失が計上されるのか?」
と題して、破産の場合の貸倒損失計上時期について
詳しく解説しますが、今回の最後として。
破産の法的手続きとは、裁判所の破産手続終結決定
(または廃止決定の確定)をもって【法人格が消滅】
することになります。確かに、手続き上は
債権の切捨ては行われませんが、取引先が破産
=法人格が消滅したわけですから、
貸倒損失になることだけは誰しもが理解できます。
このことから、破産=9-6-2が適用になる、
もしくは破産後に債権放棄の手続きによって
(債権放棄した事業年度の)貸倒損失に計上できる
とする(上記更正の請求を認めなかった税務署と同じ)
見解を記載した書籍・サイトも散見されますが、
これは違うのではないか、というのが私の見解です。
来週水曜の本メルマガでは、相手方が法人の場合で
破産した貸倒損失はいつ計上になるのか、
その根拠は何かについて詳しく解説します。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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