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2025.02.21

賃貸アパートの贈与に関する注意点(2)

※2024年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは、
前回に引き続き、
「賃貸アパートの贈与に関する注意点(2)」です。

前回から所得分散目的としての
1.賃貸アパートの贈与
に焦点を当てて解説しております。

前回は、以下2つの論点を解説しました。
■論点1(負担付贈与の回避)
■論点2(贈与後の地代)

今回は、以下の論点を解説します。

■論点3(贈与後の土地評価額)
前回メルマガ(論点2)にて、贈与後に
・土地所有者である親
・建物所有者である子
両者間で、土地賃貸借契約を締結すると
権利金の認定課税
(親に帰属する借地権が子に帰属する
 ことで、子に対して贈与課税)
となるリスクが生じるため、
使用貸借契約とすることが通常である
ことを解説しました。

これを前提に解説します。

贈与後、土地所有者である父に相続が
発生した場合を検討します。

使用貸借に係る土地については、
自用地評価となるのは周知の事実かと
思われます(使用貸借通達3)。

使用貸借通達
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/sozoku/731101/01.htm

建物所有を目的とした使用貸借により
土地を借り受けた場合、借主側の使用権につき
借地借家法の適用はされないことになります。

仮に、建物所有を目的とした賃貸借であれば
借地借家法が適用され、賃貸借による賃借権としての
借地権が生じ、強い法的保護が認められます。

そのため、使用貸借の場合には、
強い法的保護が認められないため、
貸主はいつでも無償にて
土地の返還を受けることが可能となります。

このような理屈から、使用権としての価値は
相続税評価としてはゼロとなるため、
使用貸借に基づく土地については
自用地評価されることになります。

今回のように、収益アパートのみを贈与し
その後、土地につき使用貸借契約とした
場合、上記と同様、使用権
評価額はゼロとなるため、土地については
自用地評価となるのが原則です。

しかしながら、
・贈与前の借家人が土地所有者である
父の相続発生時に同じ
であれば、土地の相続税評価額は
自用地ではなく、貸家建付地評価となります。

その理由は以下のとおりです。

贈与前の借家人は、貸家の所有者である父と
賃貸借契約を締結し、借家権を有しています。

その借家権は、その貸家を通じて
敷地利用権を有しています。

つまり、建物を賃貸借で借りた場合、
建物だけではなく、その敷地も利用できる
ことになります。

これが貸家建付地の評価減の理屈です。

建物所有者が贈与により変更され、
新たな建物所有者の敷地利用権が
使用貸借に基づく使用権となれば
本来であれば、借地借家法の保護が
なくなり、自用地評価となるはずです。

しかしながら、
この敷地利用権は、土地(敷地)の所有者
に対するものであり、貸家が第三者に譲渡
された場合でも認められるとする判例が
あります。

最判昭和38年2月21日民集17巻1号219頁
最判昭和41年5月19日民集20巻989頁

贈与される前に建物所有者との
賃貸借契約に基づき、借家人が有していた
敷地利用権は、建物贈与によっても
土地(敷地)所有者により対しても
認められることになります。

そのため、土地(敷地)所有者は
処分や利用が制限されることになるため、
自用地評価額から相応の減額を
行い、貸家建付地が可能となります。

そのため、
父の相続発生時には
贈与前の借家人と
相続発生時の借家人
が同一か否か
を必ず検証する必要があります。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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