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2023.07.28

資本金1億円以上法人における税務調査の管轄と相違点

※2022年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

今回のメルマガは、資本金が1億円以上の法人において
税務調査の管轄がどうなるのか、また
その相違点について総合的に解説していきます。

まず、資本金1億円「以上」の法人については、
原則として管轄が税務署ではなく国税局になります
(沖縄国税事務所の管轄区域は資本金5,000万円以上)。

一方で、これには例外もあって、資本金が1億円以上
であっても、国税局の判断によって税務署の
管轄にすることができます。この場合、
「税務署所管法人の指定通知書」の書面が届きます。

これらに関しては、「調査査察部等の所掌事務の
範囲を定める省令」で規定されています。

資本金1億円以上であっても、税務署管轄になるか
どうかは、あくまでも国税局の判断によるもので、
納税者側で事前に判断することはできません。

その多くは、「資本金は多額だが売上が少ない
(規模が小さい)」という理由かと思いますが、
中には売上規模が数十億あるものの、国税局の
調査を数回受けて是認だったことから、途中から
税務署管轄になった事案も見たことがあります。

早い話が、国税局の調査を受けたくなく、
税務署(特官)管轄にしたいのであれば、資本金を
1億円未満に(無償)減資すればいいわけです。

一般的に、税務署より国税局の税務調査の方が
キツくなるわけですが、理由はいくつかあります。

●調査日数が長い

国税局の税務調査はそもそも、割当日数が長く、
最低でも1週間以上と想定されます。
その分、深度ある調査をすることが前提です。

●否認項目が細かい・譲らない

国税局の調査は割当日数が長い分、減価償却費など
の細かい項目も精査されますし、税務署のように
「指導に留めます」とほぼ言わないため、
交渉しても譲ってもらえないことが多いです。

●更正することをためらわない

税務署による調査の場合、最終的に調査官は
修正申告(の勧奨)に持ち込もうとしますが、
国税局の場合は(税務署よりは)増額更正を
してくるので、さらに交渉は難しくなります
(修正申告しないので更正してください、
という最終手段が通じにくい)。

なお、調査の頻度についてもよく聞かれますが、
これは一概に回答できません。国税局管轄だから
といって調査頻度が高いわけでもありませんし、
税務署管轄の中で規模があると判断されれば、
税務署の方が調査頻度が上がるケースもあります。

また、税務調査の論点ではないのですが、
資本金1億円以上になっている理由を問うと、

・成り行き(増資した後に減資をしていない)
・銀行や取引先に対して与信が上がる
・採用目的(資本金が大きい方が採用しやすい)

という答えが返ってくることがほとんどです。

まず、資本金1億円「超」の場合、税務上の
デメリットが多い(特典がなくなる)ことから、
税理士事務所から提案した方がいいでしょう。

また、資本金が多額の方が事業上のメリットが
多いのかという論点も、私は個人的に怪しいと
考えています。与信をはかるうえで見られている
のは「純資産額」や「自己資本比率」であって、
単純な資本金の額ではないはずです。

昨今は対外的な表記(サイトや会社案内など)で
「資本金(資本準備金含む)」としている
法人も多く、明らかに資本金の額を1億円以下に
(無償減資)しているのでしょうが、対外的には
この方が印象が良いからです。少なくとも
採用が論点なのであれば表記で済む話でしょう。

税務調査の管轄は減資によって簡単に変えることが
できますので、ぜひ顧問先に提案してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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