質問検査権の要件・範囲を理解する(調査の行為)
※2021年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、前回から引続き
質問検査権を取り上げます。今回は「調査の行為」です。
質問検査権を定める国税通則法第74条の2などには、
調査官が行うことができる行為として
【提示若しくは提出を求めることができる】
と規定されています。
この「提示」「提出」については通達に規定があります。
国税通則法調査関連通達1-6
(「物件の提示又は提出」の意義)
法第74条の2から法第74条の6までの各条の規定
において、「物件の提示」とは、当該職員の求めに応じ、
遅滞なく当該物件(その写しを含む。)の内容を当該職員が
確認し得る状態にして示すことを、「物件の提出」とは、
当該職員の求めに応じ、遅滞なく当該職員に当該物件
(その写しを含む。)の占有を移転することをいう。
このように「提示」と「提出」を厳密に区分すると、
「確認し得る状態にして示す」と「占有を移転する」
となるわけですが、結局のところ調査現場においては
調査官に帳簿等を「見せる」という行為に相違はなく、
この区分をすることにあまり意味はありません。
「提示」「提出」は質問検査権の行為ですから
受忍義務があり、断ることはできない一方で、
似て非なる行為として「留置き」があります。
「留置き」は国税通則法第74条の7に規定が
ありますが、通達では下記のように規定されています。
国税通則法調査関連通達2-1(1)
(「留置き」の意義等)
法第74条の7に規定する提出された物件の「留置き」
とは、当該職員が提出を受けた物件について国税庁、国税局
若しくは税務署又は税関の庁舎において占有する状態をいう。
留置きとは、税務調査で調査官に提出した
帳簿・資料等を、調査官が税務署に持ち帰る行為を
指しますが、あくまでも「占有」することであって
所有権の移転ではありませんので、もともと
提出者である納税者への返還を予定しています。
また、留置きは質問検査権内の行為ではなく
別規定ですから、受忍義務はなく断ることができます。
「調査手続の実施に当たっての基本的な考え方等
について(事務運営指針)」
第2章 基本的な事務手続及び留意事項
3 調査時における手続
(4) 帳簿書類その他の物件の提示・提出の求め
調査について必要がある場合において、質問検査等の相手方
となる者に対し、帳簿書類その他の物件(その写しを含む。)
の提示・提出を求めるときは、質問検査等の相手方となる者
の理解と協力の下、その承諾を得て行う。
ここまでをいったん整理すると、
●「提示・提出」=断ることができません
●「留置き」=断ることができます
となり、この違いをきちんと理解してください。
さて、ここまで解説していくと、次に
「じゃあ、帳簿・資料などのコピーはどうなるの?」
「会計データは提示・提出・留置きの対象??」
という疑問も出てきます。
来週金曜の本メルマガでは、提示・提出・留置きの
対象範囲について解説します。
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