贈与に関する複眼的視点
※2023年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「贈与に関する複眼的視点」です。
贈与といえば、税理士には馴染みの深い
テーマかと思います。
節税対策としての手段として
昔から頻繁に用いられてきました。
つまり、贈与者側の財産を減らすことで
相続税対策を行うというものです。
税理士が考える贈与の主体は
あくまで贈与税と考えがちです。
しかしながら、税法から考えるのでなく
民法から考えるのが本来あるべき姿
と考えます。
なぜならば・・・
民法上の贈与契約が成立して初めて
贈与税の課税関係が生じるからです。
(みなし贈与の議論は除きます)
民法上の贈与契約は、
以下と規定されています。
—(民法549条)
贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える
意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
—
要件事実1:
贈与者が財産を無償で与える意思表示
要件事実2:
受贈者が1を受諾する意思表示
■要件事実1で注意すべき事項
贈与者側が認知症(重度)であった場合、
意思無能力となり、贈与の意思表示が
できないため、契約は無効となります。
■要件事実2
受贈するという意思表示がなされているか?
つまり、名義財産の認定の問題が生じます。
税務調査での最大の関心事である
名義預金の調査の発端は、贈与契約が
成立しているか否かが問われることになります。
そのため、民法上の贈与契約が成立している
ことを課税庁側にも立証できれば、
名義預金の認定がなされることはない、
ということになります。
その意味で、税理士が民法を学び
贈与契約を成立させることが課税庁側への
立証に繋がるというスタンスを堅持する
ことが大切になると考えます。
■贈与契約書の作成は必須か?
民法上、贈与契約は口頭ベースでも
成立します(民法549条)。
しかしながら、
贈与契約書があれば、課税庁側への立証は
格段にしやすくなるのは間違いありません。
そのうえで、確定日付を取得しておき
贈与契約書における贈与日の証拠力を
あげておくことも必須と考えます。
贈与契約書を作成するのは、課税庁対策に
限った話だけではありません。
相続人内部での紛争防止にも寄与する
ことになります。
例えば、父が生前に長男(同居)に110万円
ずつを贈与していたことを、長女(別居)は
知らなった場合、贈与契約書の有無次第では
紛争を引き起こす可能性もあります。
もちろん、贈与契約書に確定日付があれば
証拠としては尚よいことになります。
(前提:贈与者に意思能力あり)
親族間の紛争防止という
民法的視点でも、贈与契約書はあった方が
望ましいことがわかります。
税理士にとって、贈与を税務のみならず
法務の側面からも検証を重ねることは
今後必須になると革新しています。
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