過去の税務調査の内容はどこまで知れるのか?
※2022年3月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
さて、ある税理士さんから「私が関与していない時期の
税務調査で、具体的にどのような否認指摘がされたなど
知ることができますか?」(修正申告書はあるので
最終の修正項目は把握できる)と質問を受けました。
結論から言うと、開示請求をすることができます。
ただし、開示される範囲は限定的だと考えてください。
具体的な手続きとしては、「行政機関の保有する
個人情報の保護に関する法律」第12条1項に基づく
開示請求をすることになります。
開示の範囲は「自己を本人とする保有個人情報」
に該当する部分となりますので、それ以外は
黒塗りになっていることが多いです。
また、開示が「自己を本人とする保有個人情報」
であることから【個人の】所得税・相続税・消費税
などが対象となります。
法人の場合は、法人の代表者個人が開示請求する
ことになりますが、あくまでも個人に関する部分
の開示ですから、法人全般にかかる内容については
黒塗りで開示されない部分が多くなります。
上記のように、税務調査でどのような否認指摘を
受けたのかを知りたい場合は、当時の担当調査官が
作成した「調査経過記録書」を見ることになります。
「調査経過記録書」とは、税務調査において
調査官が絶対に記録・保管する(内部)書面で、
調査の実施日付ごとに、調査内容・指摘事項・
納税者/税理士の発言内容等が記録されています。
調査官がどこまで詳細に「調査経過記録書」を
記録しているのかはマチマチですが、おそらく
「調査経過記録書」を見れば、否認指摘を
受けた事項はほぼ把握できると思います。
また、この開示請求では納税者が提出した
「質問応答記録書」もその範囲となりますので、
たとえば税理士の調査立会い開始前に提出した、
もしくは調査に立会っていない間に提出した
「質問応答記録書」も開示請求が可能です。
この点は、「質問応答記録書作成の手引について」
(国税庁 平成29年6月30日)問43でも、
原則開示と明記されています。
かなり以前の調査事案に対して開示請求する
場合ですが、国税が調査事績に関して
保存・保管している期間は時効年分である
7年ですから、少なくとも7年前までは
開示請求できることになります。
開示請求はあまり知られていない制度ですが、
税理士が活用する場面もありますので、
ぜひ知っておいてください。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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