遺産分割での注意点(貸付事業用宅地等)
※2024年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは、
「遺産分割での注意点(貸付事業用宅地等)」です。
私が回答者(相続税・贈与税)の
回答者を務める
税務相互相談会
で実際に寄せられた質問を
加工してお届けします。
■前提
被相続人:父
相続人:母、長男(父母と別居)
父母は有料老人ホームに入居(持ち家なし)
相続財産:1億円(小規模宅地等の特例適用前)
小規模宅地等の特例の適用可能性:
賃貸アパート敷地のみ
・賃貸アパート(10室満室)
・上記の敷地
これらは父が所有している。
母の希望:
(1)父(配偶者)が亡くなり
収入が無くなるのは避けたい。
(2)二次相続のことも考え
財産の大半を占める土地は
長男に相続させたい。
■質問
母・長男との遺産分割において
・賃貸アパート(建物):母
・当該建物の敷地:長男
が各々相続した場合、
長男が相続する敷地には
貸付事業用宅地等として
小規模宅地等の特例(200平米、▲50%)
の適用は可能ですか?
もちろん、
相続後も売却することなく、
アパートは賃貸し続けます。
また、相続後の土地につき
(1)使用貸借契約である場合
(2)賃貸借契約である場合※
では結論に相違がありますか?
※土地の固定資産税・都市計画税
相当額の3倍程度の年間地代とします。
■検証
貸付事業用宅地等の要件:
当該親族が、
・相続開始時から申告期限までの間に
・当該宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ
・申告期限まで引き続き当該宅地等を有し
かつ、
・当該貸付事業の用に供していること
(措法69の4(3)四イ)
ここで検討すべきは
「・当該宅地等に係る被相続人の貸付事業を引き継ぎ」
となります。
それでは、ここでいう
「被相続人の貸付事業」とは
何を意味するのでしょうか。
結論としては、
「その土地の上で営まれていた被相続人の貸付事業」
を指すと考えます。
そうすると・・・
本件における被相続人の貸付事業とは
建物賃貸業の用に供していると
考えられます。
であるならば・・・
「被相続人の貸付事業を引き継ぎ」とは
被相続人の建物賃貸業
ということになります。
そのように考えた場合、
今回の遺産分割において
賃貸建物を相続し、
被相続人の建物貸付業を
引き継いだのは母となります。
つまり・・・
土地を相続した長男が、
被相続人の建物貸付業を
引き継いだことにはなりません。
また、相続後の土地につき
(1)使用貸借契約である場合
(2)賃貸借契約である場合
であったとしても、
土地を相続した長男が、
被相続人の建物貸付業を
引き継いだことにはならないため
どちらであっても
小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)
の適用はできないことになります。
■参考(継続要件)
「事業の用」「居住の用」に関する
申告期限までの継続要件は
現在では当然の知識ですが、
これは、平成22年度税制改正によって
改正された内容になります。
参考:財務省担当官による
平成22年度税制改正の解説
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11122457/www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2010/explanation/PDF/10_P434_479.pdf
(P438~P442)
平成22年3月31日以前に
相続又は遺贈により取得した
小規模宅地等に係る相続税については
事業用・居住用につき、
「非」継続であっても、
200平米・▲50%の減額が認められていました。
今となっては当然の規定も
過去では当然ではなかった時代もありました。
小規模宅地等の特例については
幾度も改正を繰り返してきましたので
過去の改正を確認することも
今後の実務に役立つものと考えます。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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