遺留分侵害額請求に伴い取得した宅地に係る小規模宅地等の適用可否2
※2022年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「遺留分侵害額請求に伴い取得した宅地に係る
小規模宅地等の適用可否2」です。
前回に引き続き同じテーマで検証します。
令和元年7月1日に施行された改正民法により
税法にどのような影響をもたらすか。
前回の設定は、以下のとおりでした。
被相続人:父(母は既に他界)
相続人:長男、長女
財産:自宅及びその敷地、預金
遺言:全財産を長男に相続させる
小規模宅地等の要件:長女のみ満たす
遺留分請求:申告期限後
結論として、
改正前:譲渡税なし+小規模宅地等の特例適用可
改正後:譲渡税あり+小規模宅地等の特例適用不可
となりました。
今回は設定を以下へ変更します。
被相続人:父(母は既に他界)
相続人:長男、長女
財産:不動産A:自宅及びその敷地(特定居住用)、
不動産B:貸家及び貸家建付地(貸付事業用)
預金
遺言:不動産Aと不動産B、預金の一部を長男
預金の残額を長女
小規模宅地等の要件:長男・長女とも満たす
当初申告:期限内申告
遺留分請求:申告期限後(不動産Bを移転)
以下、長男の当初申告における
小規模宅地等の特例適用につき
改正前:不動産Bのみ適用
改正後:不動産A、不動産Bの双方適用
として解説いたします。
■改正前(令和元年7月1日以前に相続開始)
当初申告において、長男は不動産Bにつき
小規模宅地等の特例を適用しました。
長男は、長女からの遺留分請求により不動産Bを
長女へ移転しました。
本件において、小規模宅地等の特例の対象地を
長男は「更正請求」により不動産A
長女は「修正申告」により不動産B
とすることが可能か否か?
原則として、特例適用に何らかの瑕疵がない場合、
適用対象宅地の選択換えはできません。
ただし本件は
遺留分減殺請求という
相続固有の後発的事象に基づくため
「更正請求」により不動産Aに対して
小規模宅地等の特例を適用することは
選択換えには該当しません。
また、長女も同様の理由により
「修正申告」により不動産Bに対して
小規模宅地等の特例を適用することは可能です。
■改正後(令和元年7月1日以後に相続開始)
民法改正により、遺留分が金銭債権化されたことより
その金銭債務の履行を不動産Bで行う場合
代物弁済としての扱いになります。
そのため、長女は相続又は遺贈により
不動産Bを取得したわけではないため、
「修正申告」により、
小規模宅地等の特例を適用することはできません。
また、長男は長女より遺留分侵害額請求され
その対価として不動産Bを引渡しとしても
不動産Bを相続又は遺贈により取得した事実に
変動はないため、不動産Bに対して
小規模宅地等の特例を適用することは可能です。
ただし、
長男は、遺留分侵害額の請求に基づき
支払うべき金銭の額が確定したことにより、
これが生じたことを知った日の翌日から
4月以内に、更正の請求をすることができます。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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