還付申告・更正の請求等における調査・行政指導の区分
※2023年1月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜の本メルマガに引続き、税務署からの
電話連絡が調査かor調査でない=行政指導かについて
解説しますが、今回は還付申告や更正の請求について
税務署から電話連絡があった場合の分類です
(論点は修正申告時の加算税アリ・ナシです)。
まず、更正の請求に基づく税務署からの連絡は、
原則としてすべて「調査に該当」します。
これは、更正の請求を規定する条文に、
「調査し~」と規定されているからです。
国税通則法第23条第4項
税務署長は、更正の請求があつた場合には、
その請求に係る課税標準等又は税額等について
調査し、更正をし、又は更正をすべき理由が
ない旨をその請求をした者に通知する。
更正の請求には、その原因となった事実を証する
書類等を添付・提出する義務がありますが、
税務署が追加書類の提出を求めてくる場合、
「形式審査(質問検査等を行わない調査)」
に該当することになり、行政指導ではありません。
更正の請求の場合、内容に誤りがあって還付額が
減るケースでは、本来は更正の請求に対する
修正申告になるわけですが、実務上は
更正の請求の出し直し(取下げ・再提出)として
処理されることが多いので、加算税が問題になる
ことは少ないのですが、理解としては上記の通りです。
これに似た内容として消費税の還付申告があります。
消費税の還付申告を行い、還付原因となった
書類等の提出を要請されることが多いと思いますが、
この税務署からの電話連絡は調査には該当せず、
「行政指導」に分類されます。
なぜなら、消費税の還付申告にかかる義務は
「明細その他の事項を記載した書類」
(消費税法第46条第3項)であって、
証拠書類の提出自体は義務ではないことから、
提出要請はあくまでも行政指導と理解できます。
これと似て非なるものが繰戻還付の請求です。
欠損繰戻還付請求についても消費税還付と
同じように、電話連絡で証拠書類の提出要請を
されることが多いわけですが、この行為自体は
「調査に該当」することになります。
論理としては更正の請求と同じで、下記の
法律に「調査し~」と規定されています。
法人税法第80条第10項
税務署長は、前項の還付請求書の提出があつた
場合には、その請求の基礎となつた欠損金額
その他必要な事項について調査し、その調査
したところにより、その請求をした内国法人に対し、
その請求に係る金額を限度として法人税を還付し、
又は請求の理由がない旨を書面により通知する。
ただし、これも更正の請求と同じで、
繰戻還付請求書に誤りがあっても、請求書の記載を
補正するだけで実務上の対応ができる場合が
多いので、修正申告に至らないのであれば
加算税の論点はありません。
逆を言えば、更正の請求および繰戻還付については、
還付を受けた後に税務署から電話連絡があり、
誤りがあって修正申告する場合、調査に該当する
ことから、加算税が課される結果となります。
かなり細かい論点ではありますが、同じような
還付を求める申告・請求であったとしても、
電話連絡が調査か・行政指導か、判断が相違する
ということは理解いただけたかと思います。
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