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2023.09.29

配偶者居住権設定上の留意点

※2022年10月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは
「配偶者居住権設定上の留意点」です。

令和2年4月1日施行の改正後民法における
目玉となった配偶者居住権。

この制度の利用状況については
徐々に広がりを見せてはいるものの
まだまだ利用件数が多くない現状があります。

法務省登記統計で公表された
配偶者居住権の登記件数は以下のとおりです。

令和2年4月~12月までの合計129件
令和3年1月~12月までの合計880件

配偶者保護という制度趣旨よりも
二次相続における節税手段としての
目的で利用されるケースが多いように感じます。

さて、鳴り物入りでスタートした
配偶者居住権ではありますが、
今回は設定上の留意点を確認したいと思います。

配偶者居住権の設定要件については、
民法1028条に規定されています。


(配偶者居住権)
第千二十八条 被相続人の配偶者
(以下この章において単に「配偶者」という。)は、
被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に
居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、
その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)
の全部について無償で使用及び収益をする権利
(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。
ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と
共有していた場合にあっては、この限りでない。
 一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
 二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

配偶者居住権設定時での留意点は複数ありますが、
今回はその中でも1つのケースを取りあげます。

■前提
1.被相続人は自宅及びその敷地を所有している。
2.ただし、自宅は長男との共有で二世帯住宅である。
3.被相続人と配偶者、長男家族が同居している。

このような状況で、被相続人に相続発生した場合
税理士として配偶者居住権をどのように提案するでしょうか。

答えは・・・
上記の状況では、
配偶者居住権の設定そのものができません。

なぜならば・・・
自宅建物を被相続人と長男が共有しているためです。

民法1028条1項ただし書には、
「ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を
配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。」
とあります。

つまり、自宅建物につき被相続人と
共有が許されるのは「配偶者」のみなのです。

そのため・・・
配偶者居住権を設定したい場合には
被相続人の生前に長男の共有持ち分を
被相続人かその配偶者に所有権移転する
必要があるのです。

しかしながら・・・
長男が住宅ローンを組んでいる場合などでは
所有権移転することは実務上厳しいのでは
ないかと思います。

抵当権付きの不動産については
どうしても金融機関の承認がなければ
勧められないからです。

また、仮に承認が得られた場合でも
課税の問題をクリアする必要があります。

したがって・・・
配偶者居住権の設定をお考えの場合には
自宅建物の所有権チェックすることを
お忘れないようにしてください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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