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2019.11.11

重加算税が取り消された事例(その3)

※2018年11月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

日本中央税理士法人の見田村元宣です。

今回は「重加算税が取り消された事例(その3)」ですが、

平成30年2月6日の裁決をご紹介します。

本事案は「亡養母に課されるべき相続税」を引き継いだ相続人に対し、

重加算税が課された事案です。

相続人の関係が複雑なので、まずはこれをまとめますが、

それでも複雑なので、親族図表を各人で書いてみてください。

〇請求人はM、D

〇M、Dの実父の前妻の弟Eの相続に係る相続税が問題になった

〇Eの相続人はEの母親Fのみ

〇M、DはFと養子縁組をし、その後、Fは他界

→M(Fの養子)、D(Fの養子)、E(Fの実子)

〇M、DはEの相続に係る相続税の納付義務(Fの納付義務)を引き継いだ

→M、Dの実父の前妻は以前死亡か?

では、次に時系列で状況をまとめます。

〇平成27年5月〇日:M、Dは1日50万円×2日=100万円の現金引き出し

〇平成27年5月〇日:Eが死亡(相続人は母親Fのみ)

〇平成27年5月〇日:M、Dは1日50万円×5日=250万円の現金引き出し

〇平成27年〇月〇日:M、DがFと養子縁組

〇平成27年6月18日:弁護士の財産調査等を依頼

〇平成28年〇月〇日:Eの相続に係る相続税の申告書を期限内に提出

→土地、建物のみが記載

→1億円超の金融資産は記載されず

→M、DはEの相続財産として、1億円超の金融資産があることは認識していた 

→弁護士は相続税の法定申告期限までに財産調査が完了しなかったので、

相続税の申告書の下書きと「まだ財産調査中で、おそらく、相続税が

発生するので、とりあえず申告に来ました。後日、修正申告します。」

というメモをDに渡した。

→Dはこのメモを添付し、期限内に申告をした。

〇平成28年6月〇日:Fが死亡

〇平成28年10月19日:Mの自宅にて税務調査

〇平成28年10月20日:Dの自宅にて税務調査

→不動産の評価誤り、金融資産の申告漏れを指摘された

〇平成28年12月12日:M、Dは修正申告書を提出

〇平成29年1月16日:重加算税の賦課決定処分

実際にはもっと詳細な状況があるのですが、

おおまかに書くと、このような状況です。

国税の主張は「M、Dは1億円以上の金融資産を把握しながら、

申告しなかった」というものです。

これに対し、国税不服審判所は次のとおり、判断しました。

〇Mは、本件弁護士に対して本件USBメモリ(金融資産が記録)を

交付していたものと認められ、また、M、Dは、本件預金口座から

本件現金を出金した事実を本件弁護士に秘匿するために、

その事実を明示的に伝えなかったものと評価することはできず、

その他、当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人らに、

「当初から過少に申告することを意図し、その意図を外部からも

うかがい得る特段の行動」があったことをうかがわせる事情は見当たらない。

〇結局、本件は、請求人らが、本件弁護士に対し、本件相続に係る

財産の調査に必要な資料として本件USBメモリ等を交付し、

当該調査等を依頼したが、本件弁護士が、本件相続税の法定申告期限間近に

なっても全ての財産調査を完了することができなかったことから、

請求人Dは、本件弁護士の助言に従い、相続人Fに代わって

本件メモを添付して本件当初申告書を提出し、

その後、M、Dが本件調査を受けるまでの間に修正申告に

至らなかったことについても、本件弁護士の答述にあるように、

本件相続に係る財産調査等に時間が掛かってしまったことによるものと

みるのが相当であり、M、Dが当初から本件相続税を免れる目的で

過少申告をしたとか、過少申告の意図を外部からもうかがい得る

特段の行動をしたものと評価することはできない。

〇したがって、M、Dの行為が相続人Fの行為と同視できるか否かを

判断するまでもなく、相続人Fが本件財産を申告しなかったことについて、

通則法第68条第1項に規定する重加算税の賦課要件は満たさない。

いかがでしょうか。

私はこの裁決文を読んだ際に

「この状況で重加算税が課されるんだ・・・」

「把握できている部分だけでも申告しておけば良かったのに・・・」

と思いました。

相続税の申告依頼を税理士ではなく、

弁護士にしたことも原因の1つだったのかもしれません。

いずれにせよ、落度はあれば、積極的な隠ぺい、仮装の意図は

感じられない事案でした。

しかし、一旦は重加算税の賦課決定がされていることも事実です。

もし、皆さんが立ち合いをした税務調査で

同じような事案があった場合は是非、本事案を参考にしてください。

相続は税務に不慣れな一般の方が対象になるので、

色々なことが起きる可能性があります。

そういうケースの1つとして、是非、本裁決を覚えておいてくださいね。

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