重加算税に反論しない方がいいケース
※2022年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
本メルマガでは繰り返し、重加算税の指摘に対して
反論する方法を解説していますので、「不当な」
重加算税の指摘に適正に反論することができる
税理士・会計事務所が多いと思います。
一方で、併せて繰り返し発信している内容として、
重加算税を受け入れるかどうかは、最終的に
顧問先(被調査対象者)が判断すべきでしょう。
税務調査において、重加算税を反論する
「デメリット」もいくつか想定できます。
典型的な例としては、重加算税を反論するあまり、
調査官がいったん取下げた否認指摘が、
また否認項目として上がってくることです。
つまり、重加算税に対して反論したからこそ、
いったん下がった本税が上がってしまい、
附帯税を含めた追徴税額全体が増えるケースです。
つい先日質問があった内容でも
似たような調査事案がありました。
社長の個人口座に入金されていた取引の全額が
認定賞与と指摘されたのですが、社長個人が
費消した金額については認定賞与、それ以外は
貸付金(後日返済する)として認められたものの、
認定賞与部分は重加算税と指摘された事案です。
この否認項目は認定賞与or貸付金になるか、
事実認定としてグレーゾーンではあるものの、
過去の裁決・判決などからすると、
個人的費消をしている場合は役員賞与と
判断されるケースが多いです。
上記調査事案では、一部であっても個人的費消を
しているわけですから、本来は個人口座に入金
された全額が認定賞与になってもおかしくはない
のですが、これを一部貸付金で回避できた
だけでも相当な成果だと思います。
しかし、ここからさらに認定賞与部分の
重加算税を反論すると、調査官から
「では貸付金を認めず全額認定賞与」
(+重加算税)と引っ繰り返されかねません。
他にも考えられるケースとして、
否認指摘の項目が5つあったものを、
「3つ取下げて2つの否認項目+重加算税」
となった場合などは微妙な判断をともないます。
ここでは、本税のみならず追徴税額全体で
考えるべきだという金銭的な判断基準ですが、
単純に追徴税額が下がればいいわけでもなく、
重加算税が賦課されるデメリットも考慮すべきです。
税理士・会計事務所からすると、
何が何でも重加算税に対して反論したくなる
という気持ちはよくわかりますが、
そのような対応は調査官からすると
「ではバーターには応じませんよ」
(取下げた否認指摘も否認しますよ)
となりがちですから、特に調査官が一部は
譲っている調査事案では、重加算税に反論すると
良くない方向になりがちで、注意が必要です。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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