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2024.02.09

重加算税の場合は7年遡及を免れられないのか?

※2023年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

先週水曜の本メルマガでは、申告漏れが
重加算税になる分起点について解説しましたが、
今回は税務調査の実務で理解しておくべき、
「重加算税」と「偽りその他不正の行為」の違いです。

具体的な論点としては「重加算税が課される要件が
揃っている場合は7年遡及になるのか」についてです。

まず、重加算税の賦課要件ですが、
国税通則法第68条第1項より下記となります。

隠蔽または仮装行為 ⇒ 過少申告した

なお、隠蔽または仮装行為を行ったとは、
「故意に」「わざと」ということであり、
ミスや誤りは重加算税とはなりません。

「わざとじゃない仮装・隠ぺいがあり得るのか!?」

一方で、7年遡及(除斥期間)の要件である
「偽りその他不正の行為」については
国税通則法第70条第5項に規定されています。
7年遡及の要件は下記となります。

偽りその他不正の行為 ⇒ 税額を免れた

なお、「偽りその他不正の行為」とは
一般用語でいう「脱税」であり、各個別税法における
逋脱犯に対する罰則規定でも「偽りその他不正の行為」
の言葉が使われています。

さて、この「隠蔽・仮装」と「偽りその他不正の行為」
の定義およびその関係については諸説あるものの、
一般的には「隠蔽・仮装は、偽りその他不正の行為
のうち具体的な不正行為を指す」と解釈されています。

つまり「偽りその他不正の行為 > 隠蔽・仮装」という
関係です。わかりにくいので図示するとこうなります。

https://kachiel.jp/sharefile/mailmagazine_materials_230208_2.pdf

理論上はこのようになりますから、
3年もしくは5年分の税務調査において
隠蔽・仮装行為が(明確に)あった場合において、
調査官から7年遡及と言われると、それに対して
反論できる論理はないことになります。

しかし実務上は、絶対に重加算税=7年遡及
になるわけではないのは経験上ご存じのはずです。

このように、3年もしくは5年の重加算税で
7年遡及されない調査事案が存在するのは、
それ以前の年分において同じような取引がない
(単発的な取引に対して重加算税)か、もしくは
調査官が過去遡及をするだけの時間が取れない
(時間を取る必要がないと判断している)
などのケースだと考えた方がいいでしょう。

つまり、本来であれば7年遡及【できる】ものを
あえて調査官(税務署)の事情で7年遡及
【しない】と判断しているだけです。

上記の論理およびその背景となる考え方については、
酒井克彦教授が執筆した下記論文をお読みください
(Webで検索しても出てきます)。

「消費税の無申告と偽りその他不正の行為」

※この論文内では「偽りその他不正の行為」を
国税通則法第70条第4項としていますが、
現行法では同条第5項となりますのでご留意ください

重加算税と7年遡及の違い、およびその関係に
ついては実務上重要ですのでぜひ理解してください。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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