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2025.09.17

重加算税を体系的に理解する(消費税固有の論点)

※2024年8月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

毎週水曜の本メルマガでは連載で「重加算税」について
解説していますが、今回は消費税のみに論点を絞って
重加算税が課される/課されないケースを取り上げます。

先週解説しましたが、法人税・所得税における否認項目が
重加算税になる場合、該当する消費税も連動して
重加算税になるわけですが、一方で売上除外などによって
消費税の判定が「課税事業者になる」
「簡易課税の適用がなくなる」場合、新たに
発生することになった消費税に重加算税は課されない
ことが事務運営指針によって規定されています。

「消費税及び地方消費税の更正等及び
加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shozei/000703/01.htm
第2 IV重加算税の取扱い
5(重加算税を課する場合の留意事項)
その課税期間の基準期間たる課税期間(以下
「前々課税期間」という。)に係る消費税の増差税額に
対して重加算税を課す場合には、その原因たる
前々課税期間の不正事実に連動した次の事実に起因して
当該課税期間に係る消費税額が増加するときであっても、
その増加額に重加算税を課すべきことにならない
のであるから留意する。
(1)基準期間における課税売上高が1,000万円を超え、
当該課税期間について課税事業者となることが判明した場合
(2)基準期間の課税売上高が5,000万円を超え、
簡易課税制度の適用を受けられないことが判明した場合

また、上記規定と似て非なるケースとして、
本来は免税事業者であるにもかかわらず、
課税売上高が1,000万円超として申告、消費税の還付を
受けていた場合、重加算税を課されることになります。

下記の公開裁決事例では、事務運営指針を根拠として
納税者が重加算税に該当しない旨を主張しましたが、
重加算税が認められています。

「免税事業者であるにもかかわらず課税事業者である
かのように装い、基準期間の課税売上高が1,000万円を
超えている旨の虚偽の記載をして修正申告書を
提出した行為は、重加算税の賦課要件である
「隠ぺい又は仮装の行為」に当たるとした事例」
(平成23年4月19日裁決)
https://www.kfs.go.jp/service/JP/83/04/index.html

売上除外の重加算税と、該当する消費税が連動している
ことについては、簡易課税も同じとなります。

簡易課税を選択し税抜経理している法人について、
税務調査で1,000万円の売上除外=重加算税が判明、
みなし仕入率が70%とすると、雑収入30万円が
発生(別表4で加算)するわけですが、
この30万円は課税売上除外により附随的に
発生していることから重加算税の対象となります。

一方で、隠蔽・仮装行為によって課税売上割合が変動、
これにより控除対象外消費税等も変動した場合で、
控除対象外消費税等の損金不算入が発生したとしても、
これについては重加算税の対象にはなりません。

なぜなら、控除対象外消費税等の損金算入額は、
納付すべき消費税額の計算の結果として発生する
ものであって、隠蔽・仮装行為との因果関係は
薄い(無い)と考えるからです。

この点は、下記事務運営指針の規定にもありますので、
併せて理解いただければと思います。

「消費税及び地方消費税の更正等及び
加算税の取扱いについて(事務運営指針)」
https://www.nta.go.jp/law/jimu-unei/shozei/000703/01.htm
第2 IV重加算税の取扱い
4(重加算税対象税額の計算)
重加算税の計算の基礎となる税額は、通則法第68条
及び国税通則法施行令第28条の規定により、
その原因となった更正等があった後の税額から
隠蔽又は仮装をされていない事実だけに基づいて
計算した税額を控除して計算するのであるが、
例えば、次のような場合の重加算税対象税額は、
更正等があった後の税額から、不正事実がなかった
として計算した納付すべき税額を控除した残額となる。
(1)不正事実に基づく課税売上げ又は非課税売上げの
除外があったことに伴い、課税売上割合が変動した
結果、仕入控除税額が増加又は減少した場合
(2)簡易課税制度を適用している場合において、
不正事実に基づく課税売上げの除外があった
こと等により、みなし仕入率が変動した結果、
仕入控除税額が増加又は減少した場合

さて、来週水曜の本メルマガでは、増差所得・税額
が修正申告or更正となることと全く相違し、
「重加算税=賦課決定処分」であることの理解、
また税務調査における重加算税の認定ポイント
について根本的に解説します。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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