重加算税を受け入れるかどうかは顧問先の判断
※2021年7月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
先週水曜のメルマガまで、3回にわたって
調査官が重加算税と指摘しがちな【誤った論理】について
解説してきました。何の根拠もない・不当な重加算税の
指摘には反論すべきであることは異論がないと思います。
一方で、税務調査の現場でよくあることとして、
調査官から重加算税と併せてバーター(交換条件)を
持ちかけられることも多いかと思います
(実際に相談・質問としても多いです)。
「重加算税を受け入れるなら○○はしませんよ」
という調査官からのバーター提案ですが、
実質的に脅しに近い内容もあります。
よくあるバーター内容は下記のようなものでしょう。
●「重加算税を受け入れないなら調査を仕切り直すので、
より時間がかかりますよ」
このバーターは、経営者であれば時間がかかるのを
嫌がることをよく知っていることから提案されます。
これは、細かい否認項目が多くて全項目を精査するのに
時間がかかりそうな場合、もしくは6月の調査で
7月まで繰り越すと担当者が変わるというタイミングで
持ち出されやすい提案内容です。
●「重加算税を受け入れないなら証拠固めが
必要なので反面調査を実施します」
これはさも、重加算税を課すために反面調査も辞さない
という内容ですが、特に売上比率が高い顧客がいる
場合に提案されることが多いです。
●「重加算税を受け入れるのであれば、××以外の
否認項目は目をつぶりますから」
これは調査官も否認項目の中に譲る余地があって、
増差税額が減るのだから重加算税は受け入れて欲しい
という金額的なバーターですね。
これを受け入れた場合、実際に追徴税額(本税+附帯税)
が減るケースもあります。
さて、今回のメルマガでお伝えしたいのは、
上記のようなバーターを受け入れるかどうかは
あくまでも【顧問先の意向が優先】ということです。
なぜなら、顧問税理士が重加算税の反論に
(顧問先の意向に反して)頑張ってしまったがゆえに、
「税務調査が長引いた」「反面調査をされた」
「追徴税額が増えた」など、むしろ顧問先の
満足度が下がることも想定されるからです。
先日相談を受けた税務調査の事案では、顧問税理士が
重加算税については適正な反論が可能だと考え、
反論のための書面まで作成するつもりでしたが、
顧問先社長が重加算税を(あえて)受け入れました。
春から調査開始でしたが、6月まで長引いたうえに
「7月になれば担当者が替わって仕切り直し」
「大手の発注元に反面調査を実施する」
「当初5つあった否認指摘項目が2つに減った」
など重加算税を受け入れた要因は多数ありました。
税理士としては納得できない様子ではありましたが、
重加算税を受け入れるデメリットをきちんと説明した
うえでの顧問先社長の判断ですから、
何がベターな選択かは顧問先当事者の問題です。
なお、上記「重加算税を受け入れるデメリット」
についてこそ、税理士が顧問先にきちんと
認識してもらうべき内容です。
これについては下記記事をご覧ください。
税務調査も、ただただ調査官の指摘に
反論すればいいわけではない、ということは
きちんと認識しておくべきでしょう。
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