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2024.03.22

重度の認知症罹患により実行不能となる法律行為

※2023年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは
「重度の認知症罹患により実行不能となる法律行為」です。

重度の認知症を罹患すると
全てのことがストップする

何となく、こんな感じで理解されている
方が多いように感じます。

この話のそもそも論を検証したいと思います。

そもそも・・・
民法3条の2では以下のように規定しています。


第二節 意思能力
第三条の二 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。

意思能力のない者が法律行為をすれば無効。

無効となれば、初めから効力が無いことになるため
何年経過しても無効主張が認められれば
効力を生じないことになります。

そうすると・・・
意思能力のない者か否かが問題となります。

認知症といっても症状の度合いにもよりますので
本メルマガでは明らかに意思能力がない者という
ことで、重度の認知症罹患を想定します。

つまり・・・
イメージとしては、意思疎通が全く不可能な状況
になります。

実務家としては、意思能力が無くなると
どのような法律行為ができなくなるのか、
具体的に想定しておく必要があります。

1.遺言を書くことができない。
こちらは想像がつきやすいかと思います。
このような状況にならないよう、ある程度
高齢化される前には提案をしておきたいものです。

2.遺言を書き換えられない。
一度作成した遺言の内容を変更したい場合
であっても、意思能力が無ければ
それを行うことはできません。

数年前に書いた内容から変更したいという
想いがある方もいます。
遺言は毎年内容に変更がないかの確認を
してもよいかもしれません。

3.金融機関との取引ができない。
これもイメージが付きやすいかと思います。
内容としては、
・窓口での預金の入出金
・窓口での定期預金解約
・融資申し込み
・生命保険、投資信託への加入
など様々な影響があります。

4.生命保険の契約等
こちらも契約ができないことは想像が
つくかと思います。
その他の法律行為として、
・契約者変更
・保険金受取人の変更
もできなくなります。

後者については、保険法43条2項3項が根拠となります。

(保険金受取人の変更)
第四十三条 保険契約者は、保険事故が発生するまでは、保険金受取人の変更をすることができる。
2 保険金受取人の変更は、保険者に対する意思表示によってする。
3 前項の意思表示は、その通知が保険者に到達したときは、当該通知を発した時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、その到達前に行われた保険給付の効力を妨げない。

「意思表示」という文言が出てきますが、
意思能力が無い者は意思表示をすることができません
ので、保険金受取人の変更ができません。

保険金受取人が配偶者でのままでは
節税効果がないと判断し、受取人を
第一順位相続人である子にしたい場合など
であっても保険金受取人を変更することが
できなくなります。

このように様々な場面で影響が生じることに
なりますので、具体的なイメージができるように
しておき、クライアントへ事前にお伝えしておく
ことが有用かと考えます。
※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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