重度の認知症罹患により実行不能となる法律行為3
※2023年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
税理士法人レディングの木下でございます。
今回のテーマは
「重度の認知症罹患により実行不能となる法律行為3」です。
前回・前々回と同様のテーマですが、
さらに違うケースを扱ってみたいと思います。
前々回は以下のケースを取り上げました。
1.遺言を書くことができない。
2.遺言を書き換えられない。
3.金融機関との取引ができない。
4.生命保険の契約等ができない。
前回は以下のケースを取り上げました。
1.養子縁組ができない。
2.養子離縁ができない。
3.贈与契約ができない。
4.自社株の売却ができない。
5.民事信託契約や任意後見契約ができない。
6.議決権行使ができない。
今回は以下を想定します。
1.不動産経営ができない。
アパートなどの収益不動産を相続税対策等の目的
で所有しているケースは多くあります。
そのほとんどが金融機関からの融資を受けており
その返済のために不動産経営をしています。
不動産経営という視点から認知症罹患による
影響を検証すると、単純に不動産経営ができなく
なることを意味します。
つまり・・・
通常、所有者自らが入居者の募集や賃借人との
契約、また、日々の不動産管理をすることは
ほとんどなく、その全てもしくは一部を
不動産管理会社に委託するケースがほとんどです。
不動産管理会社との間で管理委託契約等を締結
しますが、認知症罹患後は契約更新できないこと
になります(転貸借契約の更新も含む)。
また、賃借人の入れ替えに伴い、新しい入居者との
賃貸借契約の締結もできません。
これらの契約を所有者の親族が代わりに締結した場合には
無権代理となり、契約自体は無効となるはずですが、
実際の現場では、この状況が放置されているケースが
多くあります。
なぜならば、これらの契約ができなければ、
入居者との契約ができない等から、収益を稼得することができず
金融機関への返済ができなくなるためです。
今後、国土交通省の管理が厳格になり
金融機関の厳格なコンプラと同様のものが
不動産管理の業界に求められる可能性は
ゼロではありません。
上記のように、現状では放置されている状態
であったとしても、以下のようなケースでは
事実上、制約を受けることには注意が必要です。
1-1.大規模修繕に係る契約ができない。
大規模修繕を実施する場合には、数百万円から
建物規模によっては1千万円を要することになりますが、
請負工事業者が契約締結するかは、
業者次第ということになります。
しかしながら、金融機関の融資を受ける場合には
認知症罹患した状態では金銭消費貸借契約の
締結はできないことになります。
1-2.エレベーター取替工事に係る契約ができない。
鉄筋コンクリート(RC)造の建築物であれば
エレベーターが設置されていることが多くなりますが、
当該エレベーターの取替工事にも数百万円は要することになります。
そうなると、上記1-1.の状況と同様の
弊害が生じることになります。
認知症罹患が不動産経営に与える影響は
甚大と考えますので、認知症罹患前に
取りうる対策を実行する必要があると考えます。
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一切受け付けておりませんのでご留意ください。
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