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2024.04.19

重度の認知症罹患により実行不能となる法律行為5

※2023年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

今回のテーマは
「重度の認知症罹患により実行不能となる法律行為5」です。

前4回連続で同様のテーマですが、さらに違うケースを
扱ってみたいと思います。

1回目は以下のケースを取り上げました。
1.遺言を書くことができない。
2.遺言を書き換えられない。
3.金融機関との取引ができない。
4.生命保険の契約等ができない。

2回目は以下のケースを取り上げました。
1.養子縁組ができない。
2.養子離縁ができない。
3.贈与契約ができない。
4.自社株の売却ができない。
5.民事信託契約や任意後見契約ができない。
6.議決権行使ができない。

3回目は以下のケースを取り上げました。
1.不動産経営ができない。

4回目は以下のケースを取り上げました。
1.不動産の建築・建替え等ができない。

今回は以下を想定します。
1.不動産の売却・買換えができない。
有料老人ホーム入居するために自宅を売却して
その資金を老後資金に充当する。

ご高齢になると、よくある話ですが、
この場合、税理士としてすぐに思い浮かぶのが
おそらく3,000万円控除です(措法35)。

しかしながら、この論点は自宅が売却できて
初めて検討するものです。

認知症罹患して自宅を売却する意思能力が
無ければ、そもそもテーブルに乗らない
ことになります。

生前対策としては、以下になるかと思います。
(1)認知症罹患する前に売却する
(2)民事信託契約を締結しておく
(3)成年後見制度を使う

どれを選択した場合であっても課税上の
取扱いは変わりません。

ただし、(3)を選択すると
自宅売却はハードルが高いのも事実ですので
可能であれば(1)(2)を選択したい
ところです

上記は自宅売却を想定しましたが、
収益不動産を保有しており、キャピタルゲイン
を得るために売却する想定もできます。

不動産はどのタイミングで売却するかが
非常に重要になりますので、認知症罹患に
より、売却したい時に売却できないのは
避けたいところです。

また、所得税・相続税対策としての
不動産の法人化も、認知症罹患により
実行不可能となります。

不動産の買換えを検討している場合も
同様の状況に陥ります。

税理士としては、課税関係だけを
検証してしまいますが、法律行為
そのものが実行できなければ、
課税関係には辿り着きません。

2.祖父の土地に孫がマイホームを建築できない
地主の方では、よくあるケースかと思いますが、
税理士としては、以下の論点になるかと思います。

(1)住宅取得等資金贈与
(2)住宅ローン控除
(3)土地使用貸借契約で借地権認定の回避

祖父が認知症罹患してしまうと、
上記は全て実行不可能となります。

(1)贈与契約ができない
これは理解しやすいと思います。
窓口に行っても振込処理ができません。

(2)住宅ローンが組めない
住宅ローンを組む際、
まず土地に抵当権設定しますが、
祖父が認知症罹患すると
土地への抵当権設定ができません。

このタイミングで住宅ローンが
ストップします。

(3)土地使用貸借契約ができない
(2)がストップすると建物建築が
できませので、(3)の検証は不要
かと思いますが、契約締結は当然
できません。

このように、認知症罹患は様々な
法律行為に影響を及ぼしますので
影響が及ぶ法律行為を具体的に
想定できるようにしておくことは
問題解決をする上では非常に重要と
考えます。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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