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2023.02.17

長男妻への遺贈に関する相続税額の2割加算

※2022年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

税理士法人レディングの木下でございます。

先日、税理士の先生からご質問いただいた
「長男妻への遺贈に関する相続税額の2割加算」
をお届けします。

前提は以下のとおりです。

1.父には相続人として
長男(妻子あり)・長女(夫子あり)がいる。

2.父の相続財産は1億円程度ある。

3.父は長男妻に、預金の一部を遺贈する。

この場合、長男妻が取得する預金の一部につき、
相続税額の2割加算は適用されるのか?

相続税額の2割加算の根拠は相続税法第18条です。
第1項において原則的な取扱いが規定されています。

「被相続人の一親等の血族及び配偶者以外の者」
が相続又は遺贈により財産を取得した場合には
適用があるとされています。

この段階で本件を当てはめてみると・・・

父から見た長男妻は・・・
一親等の姻族に該当するため
2割加算の適用対象となります。

では、どうすれば
2割加算の対象者から外せたのか?

姻族であることが問題となるため
父と長男妻が養子縁組をすれば
一親等の血族に該当することになります。

では・・・
養子縁組をすれば、一親等の血族に該当するため
その全てが2割加算の対象から外れるのか?
という疑問がわきます。

つまり、よくあるケースとして
孫養子が採用されることが多くあります。

本件であれば、
長男の子を養子縁組した場合はどうなるでしょうか。

上記の原則的な考え方からすれば問題ないのですが、
第2項に、一親等の血族に関する一部制限規定があります。

内容は以下のとおりです。
「前項の一親等の血族には、
同項の被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子
となつている場合を含まないものとする。」

つまり・・・
父と長男の子が養子縁組をした場合、長男の子は
民法上の一親等血族に該当するにもかかわらず
相続税法第18条では、一親等血族に該当せず
2割加算の対象者に該当することになります。

では・・・
父と長男の子が養子縁組をした後に
父よりも先に長男に相続が発生した場合
はどうなるでしょうか。

この場合、同条第2項ただし書きでは、
「ただし、当該被相続人の直系卑属が
相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、
代襲して相続人となつている場合は、この限りでない。」
と規定しており、代襲相続で相続人となった
孫養子は、一親等血族の制限規定には
該当しないことになります。

つまり・・・
孫養子であったとしても、
代襲相続で相続人となった場合には
2割加算の適用とならないことになります。

それでは・・・
孫養子ではなく単なる孫が代襲相続で
相続人となった場合はどうなるのでしょうか。

この場合、民法上は2親等血族であり
一親等血族には該当しないため
本来であれば、2割加算の適用対象となっています。

しかし・・・
孫養子が代襲相続で相続人となった場合との整合性から
第1項にて、一親等血族の概念を広げています。
「・・・被相続人の一親等の血族
(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、
又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた
当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者・・・」

代襲相続で相続人となった孫は
民法上は2親等血族であるものの、
相続税法第18条では、一親等血族に含むものとして
扱われることになります。

つまり・・・
2割加算の適用対象から外れることになります。

2割加算の規定は相続税法第18条を読み込むと
どんなケースでも判断可能となりますので、
しっかりと条文を読み込むことをお勧めします。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

木下勇人

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