2022.11.25

青色取消しの実務的要件

※2021年12月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。

株式会社KACHIELの久保憂希也です。

毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に
理解する内容を連載で解説していますが、前回に引続き
「青色申告取消し」に関して解説をします。

前回は法人税法の規定を確認しましたが、
今回は実務的な要件として「事務運営指針」です。
青色取消しの事務運営指針は下記の2つになります。

「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」

「個人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」

税務調査の現場で「青色取消し」が指摘される場合、
納税者が不正行為等を行っていたケースで、
「重加算税+7年遡及+青色取消し」が多いでしょう。

通常の調査期間である3~5年で重加算税と
指摘されても、青色取消しになるケースがほとんど
無いことからも、重加算税=青色取消しにならない
ことは実務上理解できるはずです。

法人税法第127条第三号には、重加算税に絡んだ
青色取消しの要件として「その事業年度に係る
帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して
記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした
事項の全体についてその真実性を疑うに足りる
相当の理由があること」と規定しています。

この法令規定を実務的に解釈した規定が
下記の事務運営指針になります。

3(1)青色申告の承認を取り消す場合
無申告のために所得金額の決定をした場合又は
所得金額の更正をした場合において、その事業年度の
当該決定又は更正後の所得金額(以下「更正所得金額」
という。)のうち隠ぺい又は仮装の事実に基づく
所得金額(以下「不正所得金額」という。)が、
当該更正所得金額の50%に相当する金額を超えるとき
(当該不正所得金額が500万円に満たないときを除く。)。

この「定量的基準」は非常にわかりづらいので、
金額を例示して解説しておきます。

(1)当初申告所得:1000万円

(2)更正後の申告所得:3000万円
(増差所得:2-1=2000万円)

(3)隠ぺいまたは仮装した所得:1000万円

まず、(3)(不正所得金額)が500万円以上でなければ
その時点で青色申告が取り消されることはありません。

この上記のケースでは、(3)は500万円以上ですが、

(2):3000万円×50%>(3):1000万円

ですから、青色申告は取り消されません。

全体を整理すると、青色申告取消の定量的要件は、

A:(2)×50%<(3)
B:(3)≧500万円

の「両方」を満たす場合なのです

調査事案において重加算税を受け入れなければ
ならない仮装・隠ぺい行為があったとしても、
上記の定量的基準を満たしていない場合は
青色取消しになることはありません。

調査官も上記の定量的基準を知らないことが
多いので、事務運営指針をもって反論すべきです。

※ブログの内容等に関する質問は
一切受け付けておりませんのでご留意ください。

著者情報

久保憂希也

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