青色/白色・税理士関与あり/なしで税務調査の確率は変わるのか?
※2021年5月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
毎週金曜の本メルマガでは、税務調査を体系的に理解する
内容を連載で解説していますが、今回はちょっと変わった内容で、
「白色申告の方が税務調査に入られにくい」
「税理士が関与している方が税務調査に入られやすい」
など、一般の方々がネット上でもよく議論している
これらの都市伝説について考察したいと思います。
なお、今回のメルマガを書くにあたって、元国税はもちろん、
現職の調査官(立場はさまざま)からヒアリングを実施しました
(守秘義務に抵触する内容のヒアリングは行っていません)。
これらの都市伝説を考えるにあたって、
まず前提となる事実を考慮すべきでしょう。
国税庁の公表データから把握できる情報を載せておきます。
●税理士の関与割合
・法人税:約90%
・所得税:約20%
「平成30事務年度 国税庁実績評価の事前分析表」
●青色申告の割合
・法人税:約90%
このような事実を並べなくても理解できるとおり、
・税理士が関与していれば原則として青色申告のはず
・税理士の関与がない、もしくは白色申告の納税者は
売上など規模が小さく、税務調査の対象になりにくい
という前提があります。
そのうえで解説しますが、まず税務調査の「一次」選定
となる国税のシステムKSKでは、
青色/白色や税理士関与あり/なしは影響しません。
決算書や売上・所得状況など数字からデジタルで選定されます。
また、国税内では調査の選定する大きな要因として
「資料せん」がありますが、資料せんの内容から
増差等が高い確率で見込まれる場合、青か白かに関係なく、
税理士関与の有無も関係なく調査選定されます。
KSKの一次選定では上記要素は勘案されないこと、
また有力な資料せんがあれば選定されやすいことを
理解いただいたうえで、次は「二次」選定である
統括官および調査官の選定要素を、
法人と個人に分けて考えてみましょう。
●法人
法人に対する調査選定において、白色申告もしくは
税理士の関与がない納税者は、確かに調査官の選定から
外される誘因が大きいといえるでしょう。
なぜなら調査官は調査件数にノルマがあり、1件あたりの
調査にかけられる時間が限られていることから、
・白色で原資資料などが揃っていない(可能性が高い)
・経理状況などがきちんとされていない(可能性が高い)
・税理士が関与していないと調査官自身が
金額等をまとめるのに時間がかかることが想定される
などの理由から、これらの調査事案を避ける
傾向があると考えられます。いわば、同じ調査をやるなら
青色申告/税理士関与ありを優先するという考え方です。
これがどこまでの影響があるのかはもちろんわかりませんが、
そもそも白色/税理士関与なしの件数・割合は低く、また
増差の見込額も低い場合が多いでしょうから、
資料せんなど強い選定事由がない限り、
調査官は調査選定しない可能性が高いといえます。
●個人
一方で個人に対する調査選定の場合、白色/税理士関与なし
でも調査官が避ける誘因にはならないでしょう。
個人の場合、上記のとおり白色申告/税理士関与なし
の割合が高いので、調査官が慣れている・当たり前だと
考えているのが大きな理由です。
むしろ、税理士の関与がない方が調査を進めやすい
と考えている調査官も多いと思います。
確かに法人の場合は、白色申告/税理士関与なしの方が
調査確率は下がるのかと思いますが、納税者にとってみれば、
「では調査に入られたら自身で対応できるのか?」
という論点(デメリット)は残ります。
税理士関与がない調査事案で、立会いから関与を
求められたケースも数多く見てきましたが、もはや
反論の余地がない納税者がほとんどですので・・・
来週金曜は、税務調査の対象期間について解説します。
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