非居住者が絡む不動産の源泉漏れと不納付加算税
※2019年9月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
昨今の不動産市況を見ていると、外国人が
国内不動産を買う事例が確実に増えています。
そこで、税務上大きなリスクになるのは、
不動産売買もしくは賃貸の相手方が非居住者で
あった場合の源泉徴収漏れです。
源泉徴収の要件や税率等は下記をご覧ください。
「No.2879 非居住者等から土地等を購入したとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2879.htm
「No.2880 非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2880.htm
さて、ここで現実的に問題になるのは、
・外国人だからといって非居住者とは限らない
・契約の相手方を見ても判別できるわけではない
・家主(不動産保有者)が非居住者に変わった
などが考えられます。
実際の事案でもあるのですが、税務調査において
相手方が非居住者と判明した場合、源泉漏れとして
不納付加算税が課されることになるわけですが、
これを論点とした公開裁決が下記です。
平成25年5月21日裁決
http://www.kfs.go.jp/service/JP/91/01/index.html
この裁決事例では、納税者の主張が認められ、
不納付加算税は課されないことになっています。
この裁決事例の前提・判断基準は下記です。
○賃貸借契約書及び賃貸料改定承諾書を
取り交わした相手方はいずれも賃貸人の代理である
母であって、それ以外で母と接触したのは1回のみ
○店舗等の賃貸借に係る連絡は管理人と行っており、
管理人と平成23年の夏に接触した後の接触は、
本件免除証明書の提示を受けた日のみ
○賃貸借契約に係る月々の賃借料の支払は
契約締結時から一貫して賃貸人口座に
振り込まれており、その支払に際して
賃貸人から領収書等住所が分る何らかの書類が
交付された事実は認められず、請求人の住所の
変更を知り得る状況にはなかった
このように、賃借料の支払い相手方が
非居住者であると知り得ない「正当な理由」が
ある場合は、不納付加算税は課されないのです。
もちろん、支払の相手方が非居住者である場合、
源泉徴収漏れであること自体は免れませんが、
不納付加算税は別途争点とすることができますので、
上記公開裁決事例は非常に役立つといえます。
来週金曜の本メルマガでは、同じ論点について、
「契約書等で非居住者をリスクヘッジする方法」
「税務調査での具体的な対応方法」などを
解説しますので、来週もぜひお読みください。
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