65万円控除に変更する更正の請求はできるのか?
※2019年2月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
前回は、個人事業主の
青色特別控除65万円について、
法的要件と税務調査対策を解説しました。
それでは逆のパターンで、当初申告(期限内)で
10万円控除を受けていて、それを65万円控除
に変更する更正の請求はできるのでしょうか
(控除前所得は65万円を超えているなど、
法的要件を満たしていることが前提)。
結論としては、10万円控除を65万円控除にする
【更正の請求はできない】ということなのですが、
前回も解説した「正しい方法から正しい方法への変更」
ができないという理由も含めて、
この論点をもう少し掘り下げて解説しましょう。
まず、青色特別控除の10万円について。
10万円の特別控除は、確定申告への記載を
要件とするものではありませんので、
10万円の特別控除を差し引かずに所得・税額計算
していた場合、更正の請求をすることができます
(青色申告の要件を満たす帳簿書類等が
存在することが前提とはなります)。
一方で、65万円の特別控除ですが、
適用要件は下記となっています。
(租税特別措置法25条の2第5項)
(1)確定申告書にその適用を受ける旨及び
その適用を受ける金額の計算に関する事項の記載
(2)正規の簿記の原則に従った帳簿書類に基づいて
作成された貸借対照表及び損益計算書その他
事業所得等の金額に関する明細書の添付
(3)確定申告書をその提出期限までの提出を行う
の全てを満たしていることが要件です。
ですから、65万円控除を受ける金額記載が
ない場合、(1)の要件を満たさないことから
更正の請求をすることができないことになります。
また同法には、いわゆる宥恕規程が設けられて
おらず、やむを得ない事情等があったとしても
後から65万円控除が受けられません。
実務上、この誤りでよくあるのが、
不動産所得の事業的規模の判定です。
事業的規模かどうかは5棟10室基準で
判定することになるわけですが、
2人以上で共有されている場合であっても、
按分計算などを行わずに基準判定する
ことになります。
(例)12室の貸付がすべて2人で共有
⇒2人とも事業的規模となり、
1人6室とは考えないで判定する
このような場合で、誤って10万円控除した
場合は、65万円控除に変更する
更正の請求はできませんので注意が必要です。
さらには、事業所得と、事業的規模でない
不動産所得がある場合の特別控除も
判断を誤りやすいポイントになります。
事業所得があって要件を満たしている時点で
65万円控除が適用になりますので、
不動産所得が事業的規模でなく、
貸借対照表の添付をしていなくても、
65万円控除を適用することができます。
このように、いったん10万円控除を
適用してしまうと65万円控除に変更できない
(更正の請求ができない)ことになりますので、
控除額の選択は慎重に行ってください。
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