M&A関連費用にかかる税務処理(前半)
※2023年4月配信当時の記事であり、
以後の税制改正等の内容は反映されませんのでご注意ください。
株式会社KACHIELの久保憂希也です。
昨今はM&Aという行為は大企業だけが行うものではなく、
中小企業であっても一般的になっており、M&A関連費用は
少なくとも数百万円以上の取引となることから、
税務調査では重点的に確認されることになります。
今年1月にはメディアでも大々的に報道された、
ソフトバンクグループにおけるM&A関連費用にかかる税務処理
「370億円申告漏れ」ですが、この論点はあくまでも
見解の相違に基づくものであり、明確な法令等の基準がないため、
税務処理を誤りやすいのは致し方ない項目でもあります。
水曜の本メルマガでは、今回と来週の2回にわたって
M&A関連費用にかかる税務処理について解説します。
M&A関連費用に関して税務判断が曖昧・難しい理由として、
付随・関連費用の処理について明確な規定等がないからです。
まず、株式譲渡(譲受)において相手方の株式を
取得した場合、その買収の対価は有価証券として資産計上し、
損金に算入されませんが、その株式の付随費用(取得関連費用)
については、法人税法施行令では「購入手数料その他購入のために
要した費用」について取得価額に含まれることとされています。
法人税法施行令第119条(有価証券の取得価額)
内国法人が有価証券の取得をした場合には、その取得価額は、
次の各号に掲げる有価証券の区分に応じ当該各号に定める金額とする。
一 購入した有価証券 その購入の代価
(購入手数料その他その有価証券の購入のために要した
費用がある場合には、その費用の額を加算した金額)
一方で、M&Aといっても株式譲渡ではなく
【合併】による場合、税務上の適格か非適格かを問わず、
M&Aにかかった付随費用は一括の損金となることが
国税庁の質疑応答事例で明示されています。
「合併に伴うデューディリジェンス費用の取扱い」
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/hojin/33/46.htm
また、株式の取得を伴わない事業譲渡(事業譲受)の場合も、
上記合併と同じで、「事業内容や権利義務関係の把握などを
内容とする業務委託に要する費用」であって、
「移転を受ける個々の減価償却資産を事業の用に供するために
直接要した費用には該当しないと考えられます」ので、
付随費用を取得費に含める必要はなく損金になります。
このように、M&A関連・付随費用については、
スキームによって税務処理の内容が異なるわけですが、
全体を整理すると下記のようになります。
●株式譲渡(譲受):原則として取得価額に含める
(ただし、支出の時期・内容によって異なる)
●適格合併・非適格合併:損金
●事業譲受:損金
●適格分社型分割・適格現物出資:取得価額に含める
(法令第123条の4・123条の5)
●適格分割型分割:損金
●上記以外の非適格組織再編:損金
※付随費用等に関して明文規定がない行為・スキーム
に関しては損金になると考えられます
M&A関連・付随費用で税務処理に気を付けるべきは、
特に株式譲渡(譲受)の場合ということになりますが、
着手金・DD費用・仲介手数料(成功報酬)など、
損金になる/取得価額に含める項目が混在しますので、
来週はこの点について掘り下げて解説します。
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